平成12年の1〜4月の分です。


4月25日

つげの帯留めの話し



上にご覧いただいていますのは、つげの小物類です。

麻の葉の彫りの入った櫛、ひょうたんの帯留め、茄子の根付け、バレッタ風の髪飾りです。



私の家内や母がつげの帯留めをしていると、

そのくせのない木目の色目と、細かい細工の楽しさとで評判がよいもので

作っている方の所へ行ってまいりました。



つげは、黄楊とも柘植とも書き、伊豆七島が山地として有名で

3月頃に淡黄色の花を咲かす3メートルほどの常緑の木です。

生育がきわめて遅いため、その材は密度が高くきめ細やかで、木地の粘りがあるため

櫛や帯留めなどの和装品をはじめ、将棋の駒など、永く大事に使える素材として

重宝に利用されてまいりました。



「つげの小櫛を抑え挿す」の文言が万葉集にも出ておりますし、

平城京の跡からも見つかっているとのことで

大変古くから、利用されておりましたようです。



そのきめ細かさは、水に沈むほど密度が高いとも言われ、それゆえの彫りあがりの質感は、

長い間使い込むうちに、次第に深い飴色の地に変化してくるその地合とともに

くせ無くお着物を引き立てる小物として、お使いいただいております。



お使いになられたら、油(本来は椿油ですが、サラダ油などでも大丈夫なそうです)で

表面をふいて、その後乾いた布で磨いて上げることで、木地から水をはじき

自然な飴色となって行くそうです。

鼈甲(べっこう)も使い込むほどに色が飴色に変わって、時代を経てもその風合いが楽しめるお品ですが

どちらも、素材、作り手ともに少なくなってきておりますので

ご自分だけではなく、お母様や、お婆さまなどがお持ちでしたら

是非お手入れしながら大事にお使いになって下さい。





上の写真は、つげの板から彫り出すための台です。

まず木から切り出した板を、しっかり乾燥させてから彫り出すそうですが

彫り出すまでに数年をかけるものもあるそうです。

国産の質の良いつげの素材も大分少なくなってきており

横から見ると弓なりとなっている写真の櫛なども

一枚の板から彫り出すと削り落としてしまい無駄になる部分が多いため

乾燥するうちに自然と反ってきた板を使い無駄にする部分を少なくして

素材を大事にしながら、作っているとのことでした。



他の伝統的な工芸品と同様に、最近では彫る職人さんもずいぶん減ってきているようです。

特に帯留めなどの和装品に関しては、有るものを和装用に流用することの出来る方はおいでですが

素材を見て、一から帯留めのイメージを持って彫って行くことの出来る方は少ないとのことです。



私の従兄弟が貴金属をあつかう仕事をしておりますため、

宝石類や、パール、珊瑚などを使った帯留めを作ってもらうことも多いのですが

やはり同じように、ブローチ兼用や洋装でも使えるものを帯留め用に直したりする職人さんは多いけれど

「この石はこのような帯留めにしよう」、そう思って帯留めを作れる職人さんが少ないと聞かされました。



帯留めは、以前にこの欄で書いたこともありますが

ここをクリックして下さい。
新しいウインドウが開いて以前の帯留めについての記事がご覧いただけます。

帯留めは気軽に季節感を演出したり、

アクセサリーのないお着物の中で唯一素材の異なるアクセントの使えるところでもあります。

焼き物や彫り物、七宝などから、つげ、鼈甲、珊瑚など貴重な素材のものまで

またお箸おきや、アクセサリーに帯留め用の金具を付けて自分で作ってみたり

ブローチの針を通す管が付いていて、洋装用のブローチを帯留めに流用するための金具などもあります。



つげを拝見しに言ったときにご主人が言っておいででしたが

フォーマルなお着物が全盛になって、普段のお着物に気軽に帯留めをする方が少なくなったときに

帯留めを彫れる職人さんがずいぶん減ってしまったと。

私たち着物にたずさわる者にとっても、大きな反省ですし

やはりふだんの生活の中に自然とお着物姿が多くてこそ

色々な職人さんが、良い仕事ができて、ひいてはお召しになる皆さんに

よりお着物を楽しめるお品がお使いやすくなることと思います。



春も本番の、お出かけにも楽しい季節です。

ぜひお気軽にお着物お召しになってお出かけして下さいませ。

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4月10日

皇居の千鳥が淵でお花見を楽しんできました。



桜の開花予想も早くなったり、のびたりと

いつ桜が咲くのかと思いながらの今年の春でありましたが、

桜の咲きそろった先週末に、桜で有名な皇居の千鳥が淵に

桜を眺めに行ってまいりました。



20人ほどのお着物姿でまいりましたが

お着物や帯、お人によっては帯留めなどに

どこかしら桜をあしらったお品をお召しになった方が多かったので

「やっぱりいいわね」などとお話になりながら通り過ぎる方々も

多くおいでになりました。



私共の他にも、お着物姿の方も多くおいでになり

お花や水辺といった自然の風景の中には

やはり日本のお着物は、素敵に映るものです。



お食事をした部屋からも、ちょうど窓の高さに満開の桜の枝があり

自分の目線の高さに桜を楽しむ素敵な桜見物が出来ました。

満開の桜は、昼間、夕方、夜桜と、陽のたかさによって

その表情が刻一刻と変化してまいります。

いつものテンポの速い日常からちょっと離れて、そんな桜の花を眺めていると、

やっぱり日本人で良かったな、などと思うから不思議なものです。



桜が終わると、牡丹、藤、れんぎょう、あやめ・・・

梅雨時になると紫陽花、そして夏の花へと日本の豊かな四季に合わせて

色々な花が移り変わりながら咲き、私たちの目を楽しませてくれます。



日本の衣装にとってそのモチーフ自体は江戸、桃山、鎌倉さらにそのまえから

ずっと変わってはおりません。

私たち日本人にとって、四季の移り変わりやそれと共に変化する、花や景色、自然の景観は

自分の感性の中にしっかりしみこんでいるものだと思います。



着物を始め「和」のものに、ほっとしたり、ゆとりを感じるのは

時代と共に生活の様式や、環境が変わってしまった中にも

そんな自分の中の感性に、共鳴する部分があるからこそです。



自分の身に装うものに豊かな季節感を楽しめるのは

お着物ならではの楽しみです。

着物や帯ではなくとも、帯締め一本でもその季節感を演出する事が出来ます。

自分ならではのこだわりをもって、

どこかに季節のテーマを考えながらお着物をお召しになると、

これからの季節、お着物をお召しになるのがもっと楽しくなることと思います。

 (そんなこだわりを、誰かがふと気が付いてくれたりすると

  また、とっても嬉しいものだったりもします。)



気候も穏やかで、お出かけにも楽しいこれからの時期

ぜひお気軽にお着物お召しになって下さい!

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4月4日

「きもの呉盟会」桜の集いの様子です。



今年も白金八芳園にてきもの呉盟会の「桜の集い」が開催されました。

桜の開花宣言から3日後という事もあり、2分咲き程度の桜ではありましたが

大勢のお客様がおいでになり、お着物姿の華を添えていただきまして

楽しい一日となりました。





お友達同士でおいでの方や、

ご家族でお揃いでお出かけの方、

外国の方のお着物姿など、皆さんそれぞれにお着物をお楽しみでした。





当日は、春の良い時期の大安の日曜日ということもあり

ご婚礼やご結納も25組という賑やかな一日でした。

お写真は、ドレス姿ですが打掛姿でお庭でお写真を取る花嫁さんの姿も沢山見られ、

ご列席の方々にも江戸褄や色留袖、訪問着、振袖のお着物姿の方も多くおいででした。



私共のお客様は、普段のお着物にはおり姿という方も多かったので

そんなお着物姿を見て、ご婚礼においでの方から

「あら、また羽織も着てみようかしら」といった声もすれ違う時に聞かれました。





受付のお部屋には

桜をはじめ、季節のお花の柄のお着物や帯を並べ

お庭の桜と共にお楽しみ頂きました。



おいで頂いた皆様方からも、

「今度はこんな企画を・・」、「来年も来たいわ・・」といった声も頂きましたので

気軽にお着物を楽しめる機会を作ってまいりたいと思いますので

今後ともよろしくお願いいたします。

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3月25日

ぽんと背中を押されるきっかけ



> 昨年の12月にイタリア人と結婚する友人のパーティ(場所はネパール料理の店)に

> 洋 服か和服かで迷っていたときに玉川屋さんにご相談し、着物にすることにしました。

> そのときに玉川屋さんから購入した帯をつけていき、みんなに「素敵」とほめら れました。

> (なんとか自分で着付けました。)

> あの日、玉川屋さんに肩をポンとおされて着物を着ていってよかったです。

> わたしに とってもいい思い出になりました。ありがとうございました。



先日このようなメールを頂きました。

私共でお品をお求めいただいたという事以上に

お洋服でお出になろうとおもっていた方と、色々なお話をしているうちに

せっかくなら日本のお着物でとのお気持ちでお着物をお召し下さるきっかけに

私共が少しでもお役にたったことが、一番嬉しいことでもあります。



着物を着ようかどうしようか、迷っているお話は日頃仕事をしていてもよく伺います。

「他に着ている人が少ないかな・・」とか、「汚しちゃうのが心配だから・・」とか、

でも本当は着て行きたいのだけれど・・・・。



せっかくのお着物だから、気軽にどんどん楽しみたい、そう思いながらも

色々な理由を自分で考えてしまい、つい着ずにおわってしまった。

ちょっとしたきっかけ、

頂いたメールに書いてありました「ポンと肩をおされること」が

あればもっと着物を楽しめたかもしれない。

そんな方は少なくないはずです。



わたくしが、ホームページを始めて、それまではお話を伺うことの出来なかった沢山の方々から

色々なご意見を伺って一番感じる事は

「きもの離れ」(私の好きな言葉ではありませんがあえて・・)と言われる最近ではありますが

今現在は着物を着てはいないけれど、若い方でも男性でも着物を着たいと思っている方は

とっても沢山いらっしゃると言うことです。



自分の中にある、着物を着ない、ためらいをちょっと越えてみる、

ほんのきっかけ、「ポンと肩をおされること」があれば

着てみてこそ分かる着物の楽しみ、気持のゆとりや、自分なりのこだわりのお洒落などが

感じていただけ、次からはもっともっと着物を着ることが

気軽で、自然なものになるはずです。



そんな意味では、

街中にお着物姿が増えることが、一番だといつも思っております。

私共、呉服の仕事にたずさわる者も色々な努力をしてまいりますが

なにより、 普段歩く街の中に、自然なお着物姿の方が、さらっとお洒落を楽しんでいたり

日常の生活の中にお着物を取り入れていたりされて、

特別なものではなく、ごく自然に日常的なものとしてお着物があることが

これからお着物をお楽しみになりたい方にとっては一番の「肩おし」になることと思います。



ちょうどシーズンの卒業式、入学式、またご婚礼やお出かけなどにおいても

「着物を着たかったけれども、みんなが洋服みたいなのでやめてしまった・・・」

残念なことではありますが、やはり時々伺うお話であります。

でも、そんな中でもお着物をお召しになった方から必ずお伺いするお話は

「あなたが着てくるのなら、私も着てくれば良かったわ!」

というお話です。



これから春本番、お出かけにも楽しい時期です。

素敵なお着物姿が街中に、たくさん拝見できることを楽しみにしております!



(私共のお店でも、桜の会や、きもの教室のお出かけ会、

 加盟するきもの呉盟会でも、八芳園での桜の集いなど、

 お着物をお楽しみ頂く機会を、この春も色々と企画しております。

 そんなご様子もまたホームページでご紹介させていただきます。)

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3月7日

「きもの呉盟会」桜の集いのご案内。

昨年の会場の写真です。

肌寒い日と、上着のいらないくらいに暖かい日が

日ごとに変わる毎日です。

ニュースでは桜の開花予想なども聞かれる頃となりました。



春本番の4月2日(日)に、桜のお庭で有名な東京白金の「八芳園」で

玉川屋の加盟する「きもの呉盟会」の「桜の集い」が催されます。

落ち着いたたたずまいの八芳園のお庭で、

桜の花を眺めながら、お抹茶を一服お召し上がりいただけます。



春の気持ちの良い一日に、

これをきっかけにお着物をお楽しみ頂ければとの企画ですので

ぜひお気軽にご来場下さい。

(正式なお茶席ではありませんので、お気軽におこし下さい。)



日時    4月2日(日) 午前10時 より 午後4時

場所    東京 白金 「八芳園」

          東京都目黒区白金台1−1−1  掾@03-3443-3111

          JR山手線「目黒駅」よりバス または 地下鉄浅草線「高輪台」駅より徒歩

          詳しい地図は、「きもの呉盟会」のホームページに掲載しております。



会費は無料ですので、お気軽にどうぞ!

人数の都合上お申し込み制となっておりますので

玉川屋呉服店 (こちらをクリックして下さい。お申込みのメールウインドウが開きます。) または

きもの呉盟会のホームページ(こちらをクリック→  http://www.kimono.co.jp/gomeikai) へ、

お名前、ご住所、お電話番号、今後の企画への要望、お着物の楽しみ方などをお書きの上、

お申し込み下さい。

(「きもの呉盟会」のホームページよりお申し込みの場合は、
  玉川屋呉服店よりの申し込み、とお書き添え下さいませ。)



ご不明な点はお気軽にお問い合わせ下さい。

一通のお申し込みでお友達の分もお申し込みいただけますので

お誘い合わせの上お出かけ下さい。



これから暖かい春に向け

お着物でのお出かけにも楽しい時期です。

ぜひお気軽にお着物お召し下さいませ。!

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2月28日

季節の柄の楽しさ。

先日、「桜のお着物」と「江戸小紋」をテーマに展示会をさせていただきました。

手の技でこそ生まれてくる味わいの深い江戸小紋と、

日本人なら見るだけで気持が明るくなる春をイメージする桜の柄と

どちらもお客様にご好評を頂きました。



江戸小紋についてはまたお話をさせていただくとして、

今回は「さくら」について。



「さくら」は、着物の柄にするときには、そのまま桜の花を描いてみたり、

輪郭だけで花をあらわしたり、遠目で見た桜にしたり、

花びらだけを柄にしてみたりと、色々な変化の付けやすい模様です。

色目にしても、桜の柔らかいピンクは、濃い色目にも薄い色目にも地色を選ばず柄を載せられますし、

ピンクを使わないモノトーン調の桜の帯も好評でした。



ご覧になる皆さんは、「桜って贅沢よね・・ ひとときしか着られないし・・」

そんなお話をされながらご覧になります。



早めにお召しになる方は今頃から、

満開の桜のお花見に桜の柄を添えて行くのも楽しいですし、

桜が咲いたら桜の柄は着ないという方もおいでになります。

一番北の北海道の桜が咲いているうちは単衣の前までお召しの方もおいでです

宇野千代さんのように常に桜のお花を愛した方もいらっしゃいます。

春の時期のお柄ではありますが

いろいろなお召しのなりかたがあります。



もちろん一年の中では、着る時期はある程度限られますが

お洋服と違い、デザインが変わって着られなくなってしまうことがないお着物ならばこそ

長い間、その時期ならではの一番楽しいお洒落が楽しめるはずです。



ご年輩になられてからも

ちょっと渋めのお着物に、可愛い桜の柄の帯なんていうのも

お洒落なお婆ちゃまではないですか。



梅、桜、藤、紫陽花、・・・から、最近ではクリスマスの柄

なんていうのもお楽しみ頂いています。

どれも、着る時期を意識してみるのが楽しいお柄ですが

毎年毎年いつまでも、その時期ならではのおなりが楽しめるお品になります。



着ないで大事にしているのならば、本当に勿体ない気がしますし、

逆にしょっちゅう気軽にお召しになるのならば

お着物の一番の楽しみ方でもある、その季節感を本当に堪能できるはずです。

勿体ないから・・といっていた方も

桜のお品をお作りになると、そのお品をお召しになるために春のお出かけも自然と増えますし

気が付くとシーズンのあいだ目一杯お召しになられるようです。

以前にお作りいただいた方からも、

「春になるとあなたのその桜を見るのが楽しみなのよ」とお友達から言われた

というお話も伺いました。



勿体ないと思わずにそんな季節の柄だからこそ、

惜しみなく、沢山お召しになっていただきたいと思います。

春、桜を見に行ったとき、桜の柄のお召し物の方を見かけたら

どなたが見ても、それはとっても素敵なことだと思います。



お召しになる方のお話を描きましたが

季節のお柄をお揃えするのは、お売りする私たちの楽しみでもあります。



今回も、展示会の前日に飾り付けを終えて店の中を眺めると

本当に春らしい雰囲気なんです!

外はまだ冷え込んでおりますし、

その前日まではこっくりとした色目のお品が沢山かかっていたお店の中が

急に明るく、軽やかに春らしくなるんです。



飾っている自分たちが、楽しくなってくるものなんです。

夏のお品の準備をしているときも、同じ様な気持になります。

すかっとした清涼感のある色目や、夏の柄ゆきがいっせいに揃うと

子供の頃の夏休み前のような気持になって、楽しくなってきます。



私どもの店は、東京の渋谷にあり、

一年中人の出も多く、活気のある街はありますが

便利で賑やかな その反面、季節感や情緒といった物からは大きくかけ離れています。

旬の物を扱う八百屋さんや魚屋さんはコンビニに変わり、

季節毎の味を楽しませてくれたお食べ物やさんも、

ファーストフードやコーヒーショップにどんどん変わって行きます。

服飾を扱うお店も季節感よりは、流行を第一の品揃えで

次から次へと品物が(時にはお店自体が)変わって行きます。



そんな中にあると、季節感という感覚自体も自分たちで大事にして行かないと無くしてしまいます。

私どもの店の中には、二十四節気を墨で書いた巻紙が飾ってあります。

現在の生活からは少しづれる所もありますが、毎朝ふと見上げてみることで

今はどんな季節なのか、自分の気持ちの中であらためて思えるところがあります。



季節のお品を揃えて、ウインドウにかけておくことは

お客様にもお楽しみ頂けますし、私どもの楽しみでもありますと同時に、

季節感のない今の生活の中で、前を通りがかる方々からも

お喜びを頂いているようです。

ちょっとした季節感を意識できることで、日常の生活もずっと違った物になることと思います。

そんなお着物ならではの楽しみ

着物や帯だけでなくとも、帯揚げや帯締め、帯留め、半襟、髪飾り・・・

なんでも楽しめることと思いますので

是非春のお出かけを楽しんで下さい。

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1月31日

着付けの話し。

お着物の大変さとして、「着付けが難しい」とよく言われます。

日常生活が洋装が中心なので、お着物を着慣れるようになるまでは

難しくも感じるかもしれません。



ご紹介したお写真は、私どものきもの教室へ通っている方の

お正月に写したお着物姿のお写真ですが、

11月に始められて、約一月半、着物の基礎知識などの説明からはじめて

6回の講習しか年内にありませんでしたが

お正月に頑張ってお召しになったそうです。



お母様のお着物をお召しなのですが

お背のおありになる方なので、丈が大分短いために

腰紐をずっと下の方に締めてお端折もきれいに出してお召しです。



私どものきもの教室の宣伝をしたいわけではなく、

着物がお好きで、着物を楽しみたいという気持があると

習う時間の多少に関わらず、きれいなお着物姿が装えるのではないかと思います。



男性を受け入れしてもらえる所はほとんど無かったのですが

私も、1年間、女性にまじって着付け教室に通ったことがあります。

その教室にも、昼間のコースにも、夜間のコースにも沢山の生徒さんが通っていましたが

せっかく月謝を払って、時間を作ってお習いにおいでなのに

結局お着物をお召しにならない方も少なくありませんでした。



技術を身につけようとするより、着る楽しさを学ぶ、

そんな気持でお習いになるのが大事なのではないでしょうか。



私の祖母も毎日を着物姿で過ごしております。

けっして着付け教室で習うきれいな着付けではありませんが

しっくりと自分になじんだ雰囲気で、いかにも楽に着ています。



着慣れることこそ、自分らしいお着物姿が出来る一番の道で

そのためには、着物を着ることを、難しい大変なものではなく

楽しいものだと、着付けを習っているときから感じることが大切と思います。



お写真でご紹介した方も、

一度自分でお召しになってお出かけしたことで自信もつき、

次から着物でお出かけすることが楽しみになったそうです。

そんな良い循環があればお着物を着るのはどんどん楽しくなりますし

逆の循環ならば、着るのには抵抗感が多くなることと思います。



せっかくのお着物、楽しく着られるかどうか

ちょっとした気持の持ち方でずいぶん違うはずです。

これから春に向かい、お着物でのお出かけも楽しい時期です。

ぜひお気軽にお着物楽しんで下さい!

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1月21日

着物の色目のはなし。

先日、ある産地の品物を見に行ってまいりました。

紬やお召しなどの織物から染め物まで色々と品はありますが

その中で、私は織物を中心に見てまいりましたが

どこの産地という事に限らず、最近では

全体的な色目としてシックな感じの渋めな色目が多いという感じがあります。



最近は洋装の感覚でもお着物をお召しになるので

古典調の着物と帯の取り合わせ方だけでなく

モダンな感覚でお着物をお召しになるのも、また楽しさです。



黒地のお着物などは、

ご年輩の方からすると、粋筋のような感じがあり

お召しになることがあまり多くないようですが

逆にお若い世代の方だと普段のお洋服の時に黒をお召しになることに慣れているので

黒地のお着物もご年輩の方に比べて、上手に着こなしておいでです。



渋めの着こなしも楽しい事ながら

ご年代が移るにつれて、きれいな色目から落ち着いた色目に

自然と変化して行くのもまたお着物の楽しみ方です。



お洋服は、ブラウスにスカートやパンツ、セーターやジャケットなど

組み合わせのパターンが多いので渋めのお色目でも変化が付けやすいので

ご年代に色を合わせるという感覚よりは、それぞれのパーツ同士の色の組み合わせが

着こなし方のポイントになります。

(女性の方の話が中心になりますので、男性の方には申し訳ありません。)



それに対して、お着物の地色は肩から、足先まで基本的に一色であり

地色の着姿に対するウエイトが大分重くなってきますので

ご年代の雰囲気に合わせた色目というのが大事になります。



お若いときから渋めの色をお召しだと、10年、20年たったときに

お召しになっているお色があまり変わらないかもしれません。

派手になった気のするお着物でも、帯や小物の取り合わせで落ち着いた雰囲気でもお召しになれ

永く大事にお召しになれるのが、お着物の魅力の一つでありますので

今のご年代の雰囲気を一番引き立てるきれいな色目をお召しになるのもまた楽しいことと思います。

(私の表現がいたらないかもしれませんが

 派手な色目というのではなく、きれいな色目というニュアンスがお伝えしたいところなのです。)



ただ、最初に書いたように実際はそのきれいな色目のお品というのが

最近は少ないような気がするのです。

お着物はあくまでもファッションですので、色目や柄のお好みは多様ですが、

いざ品をお選びになろうとしたときにその幅が昔に比べるとかたよっているような気がします。

(私共でもきれいな色目のお品をお揃えしていると、他になかなか無いとお作りいただくことも多いですし

機屋さんや染屋さんにもそう言った品が少ないため、自分の店でオリジナルで創る品が増えてきています。)



ご自分のお好みや着こなしのスタイルにあわせて

沢山の幅のあるお品の中からお選びになる楽しさをご用意するのが

呉服屋の仕事であります。

お客様のお好みに合わせてお品をお揃えすると共に、

自分の思いや、ポリシーを品揃えにあらわすのも、呉服屋の仕事であり

楽しみでもあります。



沢山の呉服屋があり、それぞれに特色があり、

街中にも沢山のお着物姿の方があり、それぞれに自分らしい着こなしを楽しんでいる。

そんな魅力のある環境でお着物がお楽しみ頂けるよう

玉川屋らしい雰囲気のお品をお揃えしてゆきたいと思っております。

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1月5日

あけまして、おめでとうございます。 今年も気軽にお着物を楽しむために・・

  

皆さんあけましておめでとうございます。

いよいよ2000年となりました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。



お正月には久しぶりに家族揃って、着物を着て出かけました。

左の写真は、明治神宮に初詣に行ったとき。

左の写真は、店の新年会をしたときに写した写真です。

近所へ散歩に出たり、買い物に行ったり私と家内はずいぶんと着物で過ごしておりました。



初詣には、私は大島紬のアンサンブル、

(家業の店に戻ったときに両親より送られた品で、毎年初詣にはこの着物を着て行きます。)

家内は紬の生地に紅型調の型染めの小紋です。(私の母が着ていた着物です。)

新年会には、私はひげ紬のアンサンブル(成人式に作ってもらった着物でかれこれ15年ほど着ています。)

家内は紺地の小紋を着ています。

子供達は、被布とお対の着物を着ています。

上の子は三歳の祝いに着た明るい鶸色の手鞠の柄の着物を、下の子はお姉ちゃんが着ていた化繊のお対です。



子供達の着物は、七五三だけでは勿体ないので、

何か皆で集まるときや、お祝い事、誕生日など、何か着る機会があればどんどん着せています。

小さい子供ながらに、着物を着て出かけた時に周りの人から

「可愛いわね」とか「お着物よく似合うわね」などと言ってもらえるのは嬉しいようで

私と家内が着物を着て出かけるときは、

着物を着るつもりになって勝手に自分で洋服を脱いで待っています。



家内は、子育てに手がかかるときで最近は着物を着る機会が減っていましたので

久しぶりに着てみて、最初は着物の着付けがしっくりこないようでしたが

お正月に毎日着物を着ていると、日毎に着付けも落ち着いてまいりました。

やはり着物は、着慣れるというのが一番のようで

細かい着付けの仕方がどうと言うより、着姿が自然とその人になじんでくるというようです。

自分なりに着物着こなして行くには着慣れることと、

普段お話の中ではよくしておりますが、あらためて実感いたしました。



着慣れるためには、普段気軽にお着物をお召しいただけるのが一番ですが

昨年ぐらいからずいぶんと普段の街中にお着物姿の方が増えてまいりました。

ある時期から お着物はフォーマルなお着物姿が多くなり

着物といえば何か特別なときのお召し物、といった感がありましたが

普段のお着物姿が増えてきたことで、あらためてお着物の原点の

本来の姿に戻ってきているような気がします。



普段の着物姿があってこそ、何か特別なときにはフォーマルなお着物を・・

ということでは以前の形に戻ってきておりますが

でも現在の世の中は、以前お着物が日常の生活の中に自然とあった頃とは

生活様式、習慣、環境、などなど異なることが多くあります。



また以前は着物の着方やしきたり、手入れや繕いなど、家庭の中で自然と受け継がれるものでありましたが

生活の洋風化の中で一度その流れが途絶えてしまっていることもあり

今お着物をお召しの方の中には、自分で一からお着物を始められている方も多いはずです。



今の生活環境の中であらためて着物というものを楽しんでいくという意味では

今年2000年は、あらたな「きもの元年」と言えるような気がします。

よりお着物を身近に、自然に楽しんでいただけるためにお役に立ちたいと思っております。



身に装うもので、ファッションである以上、時代や環境に合わせて

着方や合わせ方が変化してくることもあるかもしれません。

洋服などでは、時期毎に必ず変わるものではありますが、

お着物が洋装と大きく違うのは、変化や新しさがあるとしても

永い歴史の中でに培われた文化や習慣をも含み受け継がれてきている

しっかりした伝統という基盤があることです。



だからこそ、その伝統にこだわってみる楽しみもあり

その伝統にとらわれない新しい形を考えてみる楽しみもあり

その人なりのこだわりや、着こなしが楽しめるのではないでしょうか。



色々な流れがあっても、その基盤がしっかりあればこそ

流行だけに流されたり、変化し続けて幅が広がりすぎることなく

着物としてのトータルな雰囲気は残されて行くはずです。



新年早々、とりとめのない話となってしまいまして申し訳ありません。

着物を取り巻く環境も自然と生活様式に伴って変化して行くなかで

呉服屋という仕事がどんな役目をして行けばよいかと

新年にあらためて考えていました。

伝統を大事にしながらも、色々な提案もしてゆきたいとも思っておりますし、

じっさいにお召しになる皆さんからも色々なご意見を是非伺いたいとも思っております。



なによりも、着て楽しんでこそのお着物ですので

今年もご一緒にお着物楽しみましょう!

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