トピックス、着物つれづれなるままに


お着物や和のものについてのトピックスや、思いつくままに色々書いています。
ご感想やご意見なもぜひお寄せください。
なるべく頻繁に更新するように頑張ります。
おいでになったら再読み込みして下さい。

平成13年の5〜8月の分です。


8月29日

夏の終わりに、屋形舟を楽しんできました。


夏も終わりの8月24日、

呉服屋の仲間うちと屋形舟を仕立てて、

着物姿で夏の終わりをを楽しんできました。



屋形舟だけならいつでも乗れるじゃないかと、

人形浄瑠璃の文楽の演者の方にお願いして

文楽の講演会をかねての企画となりました。





日頃は舞台でしか見ることの出来ない文楽のお人形を

まずは間近で拝見する事が出来ました。





近くで見るお人形は、なかなかの迫力で

また細部にわたっての細かい作りを見ていると、

こうして、あの魂が入ったような動きが出来てくるのかと

納得できました。





(左から)

胴へ衿をかける様子

 この衿のかけ方一つで人形の雰囲気が変わってしまい、

 最初に衿掛けがうまくゆくと、上のきものも自然と綺麗に着せられるそうです。



 かけ方は、教えてもらえるのではなく師匠の付け方を見て学んだり

 人形を片づけてしまうときなどに一生懸命見て自分で勉強するそうです。

男性の人形の長袴に入れるヘラ

 文楽は人形を宙に持ち上げて演じるため、長い袴などは垂れ下がってしまうため

 こういったヘラを入れていかにも地面の上を歩いている様に演じます。



人形の頭(かしら)の動きと、手の動きです。

 頭には、最初に演じたときの役によって名前が付き、

 その頭の動きも、人形によって異なります。

 また、手の動きも、普段の動きの他に事を奏でるとき、三味線を奏でるときなど

 それぞれ異なる指の動きに合わせて、使う手が違ってきます。





人形は、主(人形全体の動きと、頭、右の手を動かします)、足、左手の

3人で動かして演じます。

(主の人は、右の写真のような高下駄を履いて全体の高さを合わせて演じます。)

それぞれの動きを揃えて動きに表情を現すためには、

手や足を動かすタイミングを主の人が

頭の動きで微妙な合図を出し、その演技の中の自然な合図に会わせてそれぞれが動きます。

一人づつがうまく動くのはもちろんのこと、呼吸を合わせて全体の動きを揃えることで

人形が生きてくるのです。



最初に人形を見たときには、細かい細工によって

いかにも人のような表情や動きを表すのだとと思いましたが

お話を伺っていると、細工や人形の作りはあくまでもテクニックであって

 眉や口を動かす前の、頭の動作・・・  

 何かを取ろうと手を伸ばすときに、手の先を人形の目が常に追っていること・・・

 人形が歩くときに、動きの柔らかさや堅さでその人形が演じる役柄の雰囲気を醸し出すこと・・・

などなど、いかに人形の雰囲気がその所作を感じさせるか、

そのことが人形を動かすことであることが、だんだん分かってきて

おいてある時にはただの人形であるものが、なぜ3人が手に取ったとたんに

魂が入ったように、顔に表情が、動きに感情が出てくるのかが少し分かったような気がしました。





そして今回は特別に、

実際に文楽のお人形を動かすことに参加させていただくこともできました。

さっき見ていたとおりに、と思いながら、

なかなか思うように自分のパートも動かせず

なおかつ3人で動きを揃えるなんて・・・

私もさせていただきましたが、

本人は汗だくで結構真剣なんですが

おぼつかない動きに会場の方からは笑いがでておりました。



色々なお話を伺い、体験をさせていただいて

最後には、お話のさわりを実際に演じて頂き、拝見しました。

本式の舞台ではないので、実際のお芝居のような雰囲気は出ないのですが

それまで伺っていたお話を思い起こしながら拝見していると

一つ一つの動きに、いっそう思いが募りちょっと特別な気持で皆さんご覧になっていたようです。



9月の2日より、国立小劇場で文楽がえんじられますので

皆さんも機会がございましたら是非ご覧になって下さいませ。





皆さん文楽をすっかり堪能していただいてから、

屋形舟でお台場に出て、夏の終わりの涼しい風の中

今度はお食事とお酒を楽しみました。



50人ほどの方が、絽、紗、麻、上布、浴衣・・・と

それぞれ思い思いの夏のお召しもの。

最近では思うことの少なくなった

「風流」なんてことばが自然と出てくる、そんな夏の終わりの夜でした。

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8月8日

残暑お見舞い & 夏期休業のお知らせ

  一歩先取りの、季節感のお洒落


残暑お見舞い申し上げます。



ことのほか暑さ厳しい今年の夏ですが、

皆様お変わりございませんでしょうか。

いつも有り難うございます、

玉川屋呉服店の石井貴彦です。



暦の上では今は、ちょうど「大暑」から「立秋」へと

移り変わる時期となります。



東京では「大暑」を迎えた7月のお盆明け頃には

7月の 観測史上でもっとも暑い日を記録しましたし、

立秋を迎えようという、この文章を書いております今日は、

先週とうってかわって涼しい日となっております。



二十四節季や七十二候とよばれる歳時記の定められた頃とは

もちろん時候や環境も異なってきており

偶然ではありますでしょうが、

暦と実際の気候とが重なってまいりますと

あらためて、日本の季節感というものを想ってみたりもします。



8月に入りますと、テレビやファッション誌、広告など

「秋」の文字が目に付くようになってきます。



先週末の土曜日には、暑さの中を紗の着物に絽の羽織という格好で

厳しい暑さを感じながらも、布とからだの間を風が通りすぎてゆく

夏の着物の涼しさも実感しておりましたが、

エアコンも要らないような今日のお天気のもとでは

着物、洋服を問わず、気分はすっかり一足早い秋の心持ちとなっています。





着物では、季節感のお洒落は一歩先取りと申します。



「この柄はいつから着るもの・・・」と、決めるのではなく

今日のように、一足早い季節の訪れを感じさせる日に

ふと、次の季節を想って、ご自分の装いにとりいれる・・・



その人なりに次の季節を、ふと想った一瞬から

装いの季節感が自然と移り始めてゆくのが、

お着物の楽しさではないでしょうか。



まだまだ続くはずの今年の夏を、めいっぱいに楽しんでこそ

秋のお洒落がいっそう楽しくなるはずです。





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玉川屋では、11日(土)より19日(日)までお休みを頂いております。

お盆明けよりは、秋に向けてまた、お出かけの楽しくなる季節感のあるお品を

お揃えしてまいります。



お着物を着てのイベントや、勉強会など、いろいろと企画してまいりますので

どうぞよろしくお願いいたします。



まだまだ、暑さも厳しき折、皆様お体ご自愛下さいませ。

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8月6日

江戸小紋の工房見学のご報告


7月の14日に、八王子にあります江戸小紋の工房見学へ行ってまいりました。

私が江戸小紋が大好きなので、今までもお店で染めの実演をしてもらったり、

染め屋さんにお店に来てもらい、江戸小紋の染めについての講演会をして頂いたりしたのですが

やっぱり、「百聞は一見にしかず」ということで、

今回は工房にお伺いして、じっくり染めの工程を拝見して、

さらには、自分で江戸小紋の型紙を使って袱紗を染めてみよう! と言うことになりました。





着付け教室の、生徒さんを中心に25名ほどでお伺いしましたため、

当日は見学会用に、普段の染め付けの仕事はストップして、

迎えていただけました。





まずは、八王子の駅に集合してから工房のそばの日本料理屋さんで

お食事となりました。

いつもなら、「せっかくですから着物を着てゆきましょう!」となるのですが

近年にない猛暑の7月という事もあり、また工房内は閉めきりでかなり蒸し暑いようで、

見学の後にする染め付けの体験の時に、色糊を付けたりしてはいけないと

染め屋さんが大分心配して下さったため、今回は洋服の方がほとんどでした。



見学会用に、工房の窓などは開けて風を通して下さっていたのですが

工房の中は夏といえども加湿器がつかわれていて

本来なら、さらに窓や戸を締め切ってお仕事をするとのことでした。



あまりに暑い日でしたので、かえって皆さん思い出に残る見学会となったようでした。

普段お品だけを見ている江戸小紋ではありますが、

その工程をご覧頂くことで

とあらためて手でするお仕事が、自然とお品の味になって現れてくることを

感じていただけたようでした。



江戸小紋の楽しさや精緻さを楽しんでいただけたのは勿論のこと、

「せっかくだから、持っているお着物をしっかり着よう・・」

そんな感想を頂けたのが、とっても嬉しい一日でした。



今回ご参加いただけなかった方からも、「次は参加!」とのお声も頂いており、

また次回も企画をしたいと思っております。

よりお着物への愛着が深くなる良い機会と思います、

そんな折りには、是非お気軽にご参加下さいませ。



当日の詳しい様子は、「玉川屋 きもの染織事典」のページに載せてあります。

こちらをクリックしてご覧になって下さい。

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7月31日

和の情報サイト「和つう」がオープン!




街コミ.comという、情報サイトの「和」のサイトとして

「和つう」がオープンしました。



日常の流れるペースも速く、ものも溢れるほどに有るいまの時代、

それでも何か、ふと心に物足りなさを感じる事もあるのではないでしょうか。

そんな気持を、自然とうめてくれるものとして

「和」のテイストが求められているようです。



呉服屋の、若い仲間と一緒にサイト作りのお手伝いをしております。

是非ご覧になって、玉川屋のホームページと一緒に

これからもどうぞよろしくお願いいたします。

URLは、こちらです。 http://www.machikomi.com/wa-tsuu/index.html

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7月23日

昔ながらの誂え染めの江戸褄


ご紹介する写真は只今お承りして、お誂えにてお染めしている江戸褄です。

お嬢さんのお嫁入りに江戸褄のご注文を頂きました、

背が高く体格のよいお嬢さんのため、今回はお好みの柄を元に

白生地から誂えることとなりました。



下絵から始めることもあるのですが、

紙に書いた下絵だと、染め上がりのお品のイメージがお客様にお分かり頂きにくい為、

染め上がりの江戸褄をお目にかけて、その中からお気に召したお品を

寸法に合わせてお仕立てすることとなりました。



お召しになるときのご寸法に仮仕立てした 白生地に、

青ばなと言う染料を使い柄を描き写します。

この「青ばな」と言う染料は、蒸気に当てると色がとんでしまう性質もをっておりますので、

生地に直接描く、下絵描きに用いられます。

上のお写真が、生地に青ばなで描いた下絵です。

お写真では裾を折って写してありますが、

身頃から八掛までつながった、ちゃんと共裾の江戸褄となっています。



背の高い方に合わせて柄を描くのに、

そのまま上前のポイントを持ち上げるだけだと裾にすき間が空いてしまい、

空いたすき間に単に柄をおくと正面の柄のバランスが悪くなりますため

柄全体のポイントをちょうど良い高さに持ってゆき、

柄全体を上下に広げてバランスよく絵を描き直すと言った形になりました。



   

上のお写真2点は、上前の柄の部分のアップです。



これからの染めの工程は、この下絵の青ばなの線の上から、

小さな筒(ケーキ作りの生クリームを絞る筒をとっても小さくしたものです)で、

防染の糊をおいてゆきます。

これを糸目と呼び、友禅染めにて色を差してゆくときに、

色が混じらないようにちょうど堰の役目をします。

(柄の縁取りにある白い線がこの糸目の糊の後です)



友禅にて柄の中の彩りをさしおえると、今度は柄全体に糊をおき

地色を染めたときに、柄の中に地色が入ってこないように防染をして

地の黒染めをします。



黒地に鮮やかな彩りの文様が染めあがると、最後に箔加工や刺繍をいれて

糸目の白く残った部分に、最初と同じように筒を使い

今度は糊ではなく、金の線を描いてゆきます。



このそれぞれの工程の途中には、

蒸気を当てて染料を定着させる「蒸し」と呼ばれる工程や

糊や染料を洗い流す「水元」、水に当てた生地の巾を整え直す「地のし」

最後に染料の飛びや汚れなどを綺麗して仕上げる「地直し」などなど

数十の工程を経て、一枚の友禅初めのお着物が出来上がってまいります。



染めのお着物、織りのお品・・

こうして、それぞれに手のかかる工程を経て一つのお品がお手元に届きます。



先日は、お客様方とご一緒に八王子の江戸小紋の染め工房に行ってまいりました、

そのご様子もまたホームページでご紹介させていただきますが、

こうして私たちがお話ししたりご紹介するよりも

自分の目で実際の工程をご覧いただくのが、何より一番です。

機会がありましたら、ぜひ作り手の気が伝わる距離でお仕事をご覧になって下さい!

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6月27日

海外旅行でのお着物


梅雨の蒸し暑い日が続きますが

皆様お変わりございませんでしょうか。



以前に、海外へ旅行されるときにお持ちになるお着物について

お問い合わせを頂いておりましたお客様より、メールを頂きました。

旅先でのお着物姿も好評だったようで、

海外の旅先でお着物をお召しになるときの参考になるお話もございましたもので

ご紹介させていただきます。



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渡航前にご相談していた 着物生活ですが

結局 単衣のつむぎを持っていきました

気候が 日本の3月から4月の様だと聞いたので



深い碧の地に 新緑のようなツタ模様(とでもいうのかしら)

帯は 白のひげ紬 

帯止めに ピエロの横顔が描かれたブローチを加工して…



パリについた日に 在仏の友人(日本人)が

車で市内を回ってくれるというので

さささっと着物に着替え 時差もなんのその

あちこちで 記念撮影!

その後 フランス人のカップルが住むおうちにお邪魔して

まさに 日仏交流…

二人とも アジアンテイストお気に入りとのことで

着物姿もすんなりとけ込めました



もう一日 小雨の中 美術館で過ごすと決めた日に着ました



これから着物で海外も…と思う方々に…ご報告



地下鉄など利用するような 自由旅行では

着物は避けた方が無難です

私は 幸い イヤな思いはしませんでしたが

駅員すらいないパリの地下鉄に 着物姿でうろつくのは

ちょっと 無謀です 

唾はきかけるなど いたずらをする輩もいるそうです

それから 町中は 犬の糞が多いので

これも歩き回るなら気をつけた方がいいです

石畳・坂道・階段・・・ 歩きにくいのも 覚悟してください



パックツアーで 動く場合は お仲間とのバランスによって

着てもイイかもしれません(歩かないモンね)

それから 持っていて役立つものとして

雨コート… 季節によっては 肌寒いし 風よけに羽織っても

いいでしょう… 

私は 小雨にしか会わなかったし 

イイお着物でなかったので 気にせず ばしばしコートなしで闊歩しましたが…

(あ つまり あまりイイ着物でうろつかないことです)



蛇足ですが 帯芯は ゴム付きで胴にまくものを使用していますが

これ 洋服の時にも役立ちました

蚤の市に出かける際 スリを警戒して 帯芯の内側のポケットに

キャッシュカードなどを入れて 胴に巻きつけたんです



旅をすると 工夫するという発想が鍛えられますね…

では また  



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貴重なお話を有り難うございました!



旅先、悪天候、洋装だけの集まりの中、・・・

色々なシチュエーションでお着物をお召しになってみると

実体験として、アイデアやポイントが見つかってくることと思います。

「どんなときにでも自分らしく楽しみたい!」

せっかくのお着物ですので、そんな想いは皆さん共通と思います。

色々なご意見やアイデア有りましたら、是非お寄せ下さいませ。

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6月11日

「江戸小紋の工房見学」のご案内!


江戸小紋の工房を見学にゆきませんか!



玉川屋では、江戸小紋の職人さんにお店へ来てもらい

実演や、染めの工程などについてのトークショー等を行ってまいりましたが

「じっさいに、染めているところを見てみたい!」

そんなお声もたくさんありましたため、

このたび、八王子にあります江戸小紋の職人さんの工房へ伺って

その工程を見学し、お話を伺おうと思います。



見学するのは、「極(ごく)型」という、

江戸小紋の中でも特に細かい柄を染める職人さんの工房ですので、

無地に見えるような細かい柄のお着物が

どうやって染め上がってくるのか、楽しみにご覧になって下さい。



 江戸小紋の型紙です


江戸小紋の型紙で糊おきの体験や、

秘蔵のあまり生地に染め付けない型紙を見せてもらったりと

こんな機会ならではのお楽しみです。



型紙を使って、糊おきの体験をした生地を、染めてお仕立てして

写真のような袱紗にお仕立てして、後日お渡しいたします。



お持ちのお着物への愛着も、きっと一層湧いててくることと思います。



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  7月14日(土)、11時にJR中央線の八王子駅に集まって、

 まずは、「美ささ苑」という日本料理屋さんで、

 季節のお昼ご飯を楽しみましょう。

 ゆっくりお食事した後、1時半頃より工房の見学にまいります。



 日時  7月14日(土) 11時八王子駅集合



 会費  4000円 (お昼のお代だけ、実費にて頂戴いたします)

      工房にて、江戸小紋の染めの体験をご希望の方は

      生地代、染め代、仕立て代として8000円頂戴いたします。

 

お申し込み  玉川屋呉服店まで 電話(03-3463-2527)または

      メールにてご連絡下さいませ。

      ここをクリックして下さい。メールウインドウが開きます。

   ご連絡の際、江戸小紋の体験染めをご希望されるか、お聞かせ下さい。



   ★準備の都合上、6月末日までにお申し込み下さいませ。

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6月4日

「衣替えの時期のお手入れ」


暑さも早めの5月から、暦も6月へと移り

衣替えの時期を迎えました。

街の中の服装も、半袖や夏の制服など軽やかな装いに変わっています。

単に涼しいものを着るだけではなく、

着るものを切り替えると、気持ちもその日から

ふっと変わりますので不思議なものです。



沢山に楽しんだ袷のお着物も、

秋になるまで一休みとなります。

うっかりしていると、ついそのまま秋まで過ごしてしまいがちですが

せっかくの大事なお着物、ちょっと見てあげてから

おしまいになって下さい。



着物の汚れやすい部分は、主に衿、袖口、裾の内側ですので

まずそこをご覧になって、それからお食事の時などに汚しやすい胸元、

ハネの上がったりしている後ろの裾、自然と手が行く膝前など

畳んでしまうときによく見てあげることとで

次にお召しになるときに安心して楽しめます。



お着物の汚れを点検するときに、思いつくままにあちこち見ていると

以外と汚れている部分を見落としてしまいがちです。

お着物はどのお品もデザイン的には、同じ形をしておりますので

チェックの仕方を自分なりに決めて置いて、毎回その通りに調べて行くと

見落としがあってあとで後悔することも少ないと思います。



両袖を見てから、衿を見て、

上前見頃と衽を裾から上に見てゆき、肩で折り返して後ろ左見頃を裾まで見ます。

次に隣の、後右見頃を同様に裾から見てゆき肩で折り返して、下前見頃と衽を見ます。

これで一連の流れでお着物全体に目がゆきます。

(文章で描くとわかりにくいですが、ホームページの「お手入れのご案内」の
 「汚れやすい箇所」のページでもご案内しております。

  「お手入れのご案内」のページには、こちらをクリックして下さい。



見方の順序は色々と思いますが、毎回同じパターンで、というのが

見落としのないコツです。



袷の時期の最中の、普段にお召しの時はちょっとしたお手入れは

ご自分でされる方も多いことと思います。

しばらく間のあいてしまうこの時期は、

全体に汚れている気がしたり、沢山のシミがあったりといったときには

呉服店などのお手入れにご相談されるのも良いかと思います。



衿などご自分でお手入れされるときには、ベンジン等の揮発性の薬で拭くことが多いと思いますが

衿の下に乾いたタオルを入れて、たっぷりとベンジン等を含ませたタオルで軽く、広く

汚れをのばすような形で拭いて下さい。



つい少量のベンジンでゴシゴシ拭いたりしてしまいがちですが

そうすると汚れも落ちず、かえって生地の目がすれて白くなってしまったりします。

そうすると染み抜きや補正で色をかけても、元の風合いが出にくくなりますのでお気を付けになって下さい。

また小さな、範囲で拭いただけだとかえって後になって輪ジミにとなって出てくることもあります。

衿などを拭く場合には、衿全体にのばすくらいの気持ちで拭くぐらいでよいことと思います。



ベンジン等で拭くことは、汚れをキジから捕ると言うよりは

あくまでも汚れを薄く目立たなくして広げていることでもあります。

汚れ等の目立たない、紬や柄物の小紋などでは安心ですが、薄色や無地っぽいものなどでは

呉服店や専門の染み抜きやさんなどに、ご相談されるのが長い目で見てお着物の為になることと思います。



私共でも、大分いじってしまった後のシミをお預かりしたり、

どちらかで一度お手入れをされて、それでも綺麗にならずにあらためてお預かりするお品、

そういったお品が、染み抜きやさん一番苦労するようです。



汚れたまま、そのままお持ちいただくのが一番と、染み抜きやさんからは言われますが、

お食事の時など汚したりしたときには、つい慌ててその場でゴシゴシ拭いたりしてしまうようですので

あわてず、乾いたタオルを借りて軽くたたき、シミの水気だけを取って

後はそのままにして、お帰り担ってから染み抜きにお出しになるのが一番です。



お洋服のクリーニングと、和服の染み抜きが違うのは、

ただ洗うだけではなく、その後の補正という作業があります。



落ちにくいシミや、古いシミなどの時に、時にはシミと一緒に着物の地色ごと抜いてしまう時もあります。

そうしてから、あらためて周囲と同じ色目をその部分にさして綺麗に仕上げます。

シミや汚れの具合や箇所に応じて、様々な方法がありますが、

(どうしても落ちないときなど、お品によっては周りと同じ雰囲気の柄を描いてしまうこともあります。)



普段のお着物のちょっとしたお手入れは皆さん自分でされたいでしょうし、

お品によっては、どんな風に手入れをしたら不安なときもお有りと思います。

そんな時には、何でも気軽にご相談になれる呉服店など、お店を見つけておくのが、

お着物を安心してお召しになれる、一番の道と思います。

(いつもかかりつけのお医者さん、よく言うホームドクターのような感覚でしょうか)



でも、いつも汚れを気にしながら着ていると、着苦しくなってしまいますので

まずは、シミをつけることなど気にしないで、お食事の時には美味しく食べて

お好きなところへお出かけして、お着物を沢山に楽しんで、

そのかわり、お召しの後には汚れなどをちゃんと見てあげて

ときどき(特にシーズンの変わり目など)、大切にお手入れしてあげてください。



暦の上では、袷から、単衣の切り替えどきでもありますので、

普段はつい忘れがちなお手入れのお話でした。



単衣から薄ものにかけて、季節感豊かな、日本のお着物ならの楽しい時期です。

これからのシーズンもお着物お気軽にお楽しみ下さい!

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5月13日

季節のお便り 「うすもの」


”メールのアドレスを頂戴しております方に、時折、お送りしております「お便り」です。”



いつも有り難うございます。

玉川屋呉服店の石井貴彦です。

季節の変わり目の時期ではありますが、

皆さんお変わりございませんでしょうか。



春から初夏へと季節も移り、

連休明け頃から街中にも半袖の方が増えてきました。



お着物では、袷のお着物から単衣、薄ものへと移ってまいります。



生地は透けないながら裏地を付けない単衣のお仕立て、

そして柔らかく透ける表地に襲(かさね)の映りが

いかにも涼しげな絽、紗、といった夏の生地。



薄ものは、本来「羅」の字をもって「うすもの」と読んだようで、

そんな軽くて薄い着物を古くは、「蝉の羽衣(せみのはごろも)」

といい表しました。



「蝉の羽」は、「薄し」・「衣」・「ひとへ」などの言葉にかかる枕詞として

古今集の頃から、句に詠まれて、夏の衣装をあらわしました。



「鳴く声はまだ聞かねども蝉の羽のうすき衣はたちぞきてける」




時代は変わり、今の世の中・・

季節感もだいぶ変わり、夏の暑さも一層きびしさがましてきます。



土の地面に、日本家屋、開け放った窓から風が自然とと通り

道に打った水でちょっとした涼しさを取り戻せる・・

私も小さかった頃はそんな思いがありますが

アスファルトの道に、コンクリートのビル、

エアコンが入って気温は涼しいはずなのに、気持ちの上で涼感が感じられない。



便利で快適なようで、ちょっと寂しいような気がします。



本来の時期でゆくと、

5月までが袷の着物、6月が単衣で、7月からは夏の着物となります、

実際、着物を着ていると連休明けにはもう単衣の着物で

ちょうど良い気候になってきます。



正式な集まりなどには、暦通りの着物を着てまいりますが、

普段のお店のでの着物や出かけるときには、

連休明けくらいからはいつでも単衣の気分でいます。



基本のルールはありますので、それを大事にしながら

TPOに応じて、自分なりの快適な着方を見つけてゆく

それもお着物の楽しみ方の一つです。



昨日まで着ていた単衣を薄物に取り替えた日は、

自分の中で季節がまるっきり変わりますから不思議なもので、

暦通り、一日からお召し物を切り替えることでご自分の中の季節感を大切にしたり

気持ちを切り替えたりというのも、また良いものでもあります。




勝手気ままに着るのでは、せっかくのお着物らしい季節感の楽しみが無くなってしまいますので

今までの流れや、季節感を考えながら、

自分なりにお着物を楽しんで頂ければと思います。




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出光美術館(東京 日比谷)では、5月19日より7月1日まで

「林派の華 酒井抱一展」を開催いたします。



酒井抱一は、玉川屋の2月の個展でも取り上げました

俵屋宗達、尾形光琳を祖とする 江戸時代の画風である「林派」の系譜を受け継ぐ

江戸後期を代表する日本画家です。



1815年(文化12年)には、光琳百回忌を営んで「光琳百図」を刊行したりと

光琳様式の画風の普及に努め、林派の系譜は古典のお着物の文様のとしても

今の時代に受け継がれております。



詳細は出光美術館のホームページにてご覧頂けます。

こちらをクリックして下さい。http://www.idemitsu.co.jp/museum/index.html



しっとりとした古典の雰囲気を、ご覧になると

綿々と流れる日本文化の伝統を、あらためて感じることが出来ることと思います。




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アサヒビールの文化講座の「手仕事の魅力」シリーズの第一回として

「アンティークきものの世界・きこなすアート」が開催されます。



講師をされるのは、マリンバ奏者で、アンティークのお着物をお持ちになりながら

ご自分なりに着こなされている、通崎睦美さんです。



以下は、ご本人の講座に向けてのコメントです。



○ ある日、亡くなった大正生まれの叔母の箪笥から出てきた着物を見て、たいへん

な衝撃を受けました。そこには、それまで目にした事もなかった斬新なデザインがあっ

たからです。それ以後、昭和初期を中心とするアンティーク着物に魅せられ、「自分

が着る」という目的で収集を始め、今では400点を越えるコレクションがあります。



○ 京都という土地柄、友禅や絞り染めに始まり、洗い張り、湯のし、シミおとし、

仕立てまで、家のまわりには、着物関係の職人さんがたくさんおられます。そんな皆

さんに支えられながらの「アンティーク着物ライフ」についても紹介できればと思い

ます。



○ 明治維新以降の近代化で、男性が和服から洋服にスタイルを変えたのに対し、女

性は、和服のまま、洋風スタイルを「着物の図案」として取り入れていきました。

西洋の「アール・ヌーヴォ」ロシアの「ロシア・アヴァンギャルド」アメリカの「ポッ

プ・アート」等と着物の図案とのつながりを、実際に着物を展示して見ていただきな

がら、お話ししたいと思います。




温故知新、

古くを大切にしながら、新しいものをまた次の世代に受け継いでゆく、

そんなお着物本来のお召し方のお役に立つのではないでしょうか。

講座へのお申し込みは、アサヒビールのホームページにてご覧頂けます。

こちらをクリックして下さい。http://www.asahibeer.co.jp/culture/m_calendar/cal_05.htm

(申し込みは 、お名前、ご住所、お電話、ファックスをご記入の上

  アサヒビール株式会社 環境文化推進部 山城さま宛にファックスにて

    FAX 03-5608-5201 

  お問合せは同じく、電話 03-5608-5195  まで)




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渋谷の街にも、ずいぶんとお着物姿の方が多くなってまいりました。

「あ、やっぱり私も着てみようかな・・」

気軽に楽しくお召しの方を見ると、

そんな風に思われる方もきっとますます増えてくるはずです。



皆様、是非お気軽にお着物お召しになって下さいませ。

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