染み抜きについて
お着物を着るときは皆さん汚れを付けないように気を使うはずです。きれいに着てても汚すのが心配でじっとしていたり、美味しい御食事もあまり食べられなかったなんて事があるのではないでしょうか。ここで発想を180度転換してください。
まず汚してもよいからリラックスして気軽に着物を楽しんでください。せっかくのお着物ですから気持ちを楽にお召しになるほうが、きっとあなたを素敵に演出することが出来ると思います。
そのかわりお召しの後、汚れていたら必ずきれいになるようお手入れをして下さい。
今は技術も良くなり以前は落ちなかった墨や、血などの染みも早いうちならきれいにおとせます。こまめなお手入れは結局、ほおっておいて後でするよりお値段的にも安くあがるのです。
輪じみについて
着物に着いたシミを完璧にきれいにする為には、その付いた汚れを完全に生地から取り除かなければなりません。衿などの汚れを取るためベンジンなどで拭く事もあるかと思いますが、汚れが薄まり広い範囲に広がりきれいになったように見えるだけで実際は生地から汚れのもとはあまり取れていません。このまま放っておくとその広い範囲にやがて輪じみが出てくることがありますのでご注意下さい。あくまでも一時的な処置で、長期間着ない場合には専門店へお出しください。
また夏物や単衣の脇の下なども汗の輪じみが出易い部分ですのでお気を付け下さい。
汚れ易い場所
まず衿、袖口、裾の裏を見て下さい。この3箇所が着物を着たとき一番汚れ易い場所です。次いで膝の前、袖の袂、胸元などを注意してください。
応急処置
着物を汚したときは慌ててしまうものです。その様なときは、乾いた布で軽く叩き汚れを布にうつしとって下さい。(強くこすったり、水分の多い布で拭くと、生地を痛めたり汚れを広げることになる事もあります。)
シミ抜きの仕方も本などに色々出ていることと思いますが呉服屋から見て一番良い方法は、汚れがそれ以上ひどくならない程度に拭き取り後はあまりいじりすぎないことです。着物の生地の絹は非常にデリケートな素材です。汚れを落とそうとこすりすぎるだけで生地の目を痛めてしまうこともあります。また「輪じみ」の項にも書いてありますが、生地の汚れを完璧に取り除くのは難しく中途半端のまま置いておくうちに時間がたち汚れが残ることがあります。
応急処置だけにしておき、呉服店にお任せ頂くほうが間違いなく、きれいになることと思います。
保管法
着物の保管法は湿気を持たせないことが一番肝心です。お召しの後は風通しの良い陽の当たらない所へ一日ほどかけて、良く湿気をとばして下さい。(ながい時間かけすぎると生地がたれてきて、仕立てが狂うことがありますのでご注意下さい。)虫干しが出来ないときでも湿気の少ない時期に箪笥の引き出しをあけて風通しを良くすることだけでも違うと思います。
また防虫剤のことでよくご質問を受けますが、今の家屋では虫が出ることも少なくなってきたと思います。以前はウールの着物なども多かったため虫に食われることも多かったようです。逆に防虫剤は薬が溶けて気体のガスを発生させ虫を駆除しますが、このガスがお着物(特に袋帯など)の金糸や銀糸などの金属糸に影響を及ぼし黒く変色させたりすることがあるようです。二種類以上の異なる防虫剤を使うと特に顕著に出るようですが、一種類でも品物のそばに置いてあると影響が出易い様です。
着物の和箪笥用の湿気取りなどが一番良い様ですが、これも長い間入れっぱなしだとそこの部分に湿気が集まりシミの元になりますのでご注意下さい。