平成9年の9月、10月、11月、12月の分です。


12月10日
着物とゆとり

着物を着ることの楽しみ方は、季節感を楽しんだり、小物の取り合わせを色々考えたりと、その方によって色々有る事と思います。

私の場合は着物を着た時に感じる事の出来る「ゆとり」が、その一番の魅力です。

今の世の中は何かと忙しく、時間に追われる生活をつい送りがちですが、

着物を着た時にはいつものそんなペースからちょっと離れる事の出来る気がします。

 

以前はスーツ姿で仕事をすることが多かったのですが、衿をきっと詰めたネクタイ姿でなく、

楽に衿元を合わせ、帯もゆったりと結んで店に出た時は、する仕事はいつもと変らないながらも気持ちに少しゆとりが生まれます。

(なにぶん慌てて急ごうとしても着物だとそうも行かず、かえって開き直ってのんびりした気分で出来ます。)


逆に気持ちの中にゆとりが無いときは、着物を着るきになれない時もあります。

朝目覚めた時から今日はこれをして、あれをしてと一日の予定が頭の中にいっぱい浮かぶ時はついワイシャツに袖を通してしまいました。

実際私の服装のパターンは、着物を着始めると着物が続き、忙しい時期に洋服を着るとそれが続いていました。

その洋服が続いたときに気分をかえて着物を着て見ると、昨日まで何故あんなに忙しくしていたのだろうと、ふと思ったりします。


 着物は女性のものと思っている方も多いかと思いますが、

ゆったりと身につけるという点では男の方の着物のほうがその効果は大きい事と思います。

衿もゆったりとし、袖も広くあき、洋服の時とは違いあまり体を締め付ける所は少なくなっています。

帯もウエストに締めるズボンのベルトとちがい下腹に締めますので、気分的にはだいぶ違う事と思います。

(帯もちゃんと結べば、帯巾全体で締めるのではなく、帯の下端だけが締まりますので、上の方は少しすき間が空き楽に着ていられます。)

着こなしもあまりきりっと着るのでなく、少しだらっとする位の方がかえってゆったりと着ているようで良いのです。


 私は仕事がら日常的に着物を着ることがありますが、普通はなかなかそういうわけには行かないと思います。

そういう方ほど、自分の生活のオンとオフの切り替えに着物が良い役目を果たすことが出来るのではないでしょうか。



12月4日
着物は世界を救う?

 1日より地球温暖化防止京都会議が行われています。

近ごろ日常の生活の中でも環境問題が語られることも多くなってまいりましたが、京都会議の関連イベントとして風呂敷を見直すイベントが行われるそうです。



 風呂敷はただの一枚の布ですが、その包み方を工夫することで大きな物でも小さな物でも、

四角でも丸でも、壜のような物でも包み込むことが出来ます。

その意味では簡易包装がすすめられる中、役立つグッズの一つであることは間違い無いはずです。


 また風呂敷の大きさもハンカチほどのものから、茶箱を包むことの出来る程の大きなものまで様々有ります。

またその素材は綿素材、絹素材、化繊素材、色柄も無地染めやぼかし染め、着物の柄のような友禅染め、唐草に代表されるような型染めのもの、

その色や柄も最近ではカラフルなものが増えてきています。

 


 小さいサイズのものは、お祝いを包んだり、バッグの中の仕分けをしたり、と物を包むだけでなく

膝掛けやお食事の時のエプロン代わりにと色々な使い道が有ります。

小さくたたんで、とりあえず鞄の中に入れておくだけで以外と役立つはずです。


 大きなものを包むときでも包むものの形により色々な包み方があります。

身近に必ず1枚や2枚はある風呂敷をもう一度見直して使って見ませんか?きっと思いがけない便利さに手放せなくなることと思いますよ。


 日本人は本来自然と調和し、無駄を出さない智恵を持って生活していました。

風呂敷もさる事ながら、直線裁ちで仕立てられたお着物は大切なその生地を無駄にすること無く最後まで使いきる、永い間の智恵がその中に含まれているのです。


 植物から作られる綿や麻の素材ももちろんのこと、絹の着物は何千匹もの蚕の大切な命と引き替えにその美しさを私達に与えてくれます。

(以前は「お蚕さん」と「お」を付けて蚕を呼び、人より大事にしながら育てられていました。そんな話もまたいつか書いて見たいと思います。)


 お着物は年齢や体型に関わらず直線裁ちで、同じ裁ち方で裁断されます。

(各パーツのサイズはそれぞれの人で異なりますが、基本的な裁ち方は同じです。)

そのため一度ほどいて、もう一度縫い直せば再び1反の反物に戻ります。

 

 この基本の形が常に保たれる為、寸法の違う着物に仕立て直したり、着物をコートにし裁て直したり、羽織りをコートに直すといった事が出来ます。

また、汚れが出たお品を染め直したり、使える所だけを残して帯に仕立てたりといった事も出来ます。

(昔は最後には寝具の掛け布団や座布団、鏡台掛け等に直したそうです。)

 きれいな色や柄に目が行きがちなお着物ですが、このような暖かい智恵をそのきれいな着物姿の中に持っているのです。

そんなお着物を箪笥の中に眠らせているのは、とっても勿体ないことです。

 着物の持つ価値や智恵を想いながらお召しになれば、その色柄もいつもよりより一層引き立ったものに感じられるのではないでしょうか?

 



12月1日
京都へ行ってきました。

 11月の半ばにお客様をお連れして、京都へ行ってまいりました。

 今年は暖かい気候のせいか紅葉がいつもの年より早かったようで、そろそろ終わりの頃でしたがきれいな景色を楽しむことが出来ました。

(人手は大変なもので平日というのにどこへ行くにも名所の周りは渋滞で大変でした。)

 最近は各所の寺社でライトアップをしての夜間拝観が行われているようで、

(11月の最初の頃は金閣寺のライトアップも行われていましたが、入口へたどり着くまでに2時間という混雑振りだったようです。)

今回は東にある「青連院」という門跡を見学してきました。

 

 静かなお寺はそれだけでも雰囲気がありますが、しんしんと冷える京都の夜の寒さの中、しずかにライトに浮かび上がるその光景はまた特別な趣がありました。

(ライトアップもただ照らすのでなく、かなり凝った演出がされていますので、幻想的な雰囲気がかもしだされています。)

 翌日の昼間は、西に有る龍安寺を見学しました。龍安寺というと石庭が有名ですが、

今回は特別に普段は非公開のお堂やお庭を見学させて頂きました。

 京都に何年か暮らして龍安寺も何度も見学に行きましたが、いつも見ていた景色とまた違う所を見る事が出来、

あらためて京都の奥深さのようなものを感じられました。

 拝見したお堂は普段は檀家さんの法事などで使うもので、何度も火災にあった龍安寺の比較的新しいものだそうですがその内のつくりは素晴しいものでした。

(観光で見に行くようなお寺でもちゃんと檀家さんがあって法事もするのだなあと、変なところで感心してしまいました。)

 その後は再び東へ向かい(今回はやたらと西へ東へと走り回る旅になってしまいましたが)永観堂 へ紅葉見物に向かいました。

 ちょうど紅葉の盛りを少し過ぎたくらいの頃だったので、枝に色づく紅葉と、地面に色のじゅーたんの様に散った紅葉とを楽しむことが出来ました。

昼間は汗ばむくらいの暖かいお天気でしたので、ゆっくりと紅葉を楽しむことが出来ました。

永観堂はお寺の中を拝観するのと、お庭を散策するのとでは入場券がちがいますので、紅葉を楽しむだけならばお庭の入場券だけをお求めになるのがお得です。

(お庭だけでも十二分に楽しめることは受け合いです。逆にお寺の中は混みすぎてあまりゆっくり見られないかもしれないくらいです。)


 帰京の前にはお土産を買うのも楽しみの一つです。私達がいつも立ちよるお土産のお勧めの店を一つご紹介いたします。

四条通りの東の突き当たりに八坂神社がありますが、その少し手前の北側に「かづら清」という和装の小物やさんがあります。

 櫛やかんざし、髪飾り、帯止めと
いった小物を中心に京都らしい品が
沢山有ります。洒落た小物が多いので
舞妓さんも買い物に来るそうです。
 和装小物もさる事ながら、
ここで売っている油取り紙が
お土産に大変喜ばれます。



 今回は京都にこの秋オープンした駅ビルの中にある「グランビア京都」というホテルに宿泊しました。

15階建ての高い建物で、京都の景観論争でだいぶ話題となりましたのでご存じの方も多いかと思います。

確かに京都にはちょっと風変わりな建物ですのでその是非は別としても、新しいだけあってきれいで、快適なホテルでした。

以前の京都駅は新幹線の改札から階段を上がったり下がったりと駅前に出るまでかなり面倒でしたが、その煩わしさが無くなりましたので

新幹線をご利用の方(ほとんどの方がそうだと思いますが・・)には大変便利なホテルです。

 出発の15分くらい前までホテルのティールームにいても大丈夫なくらいです。



 今回の旅も私を含め全員お着物で京都をめぐってまいりました。(もちろん往復も着物で。)

特に京都は着物の合う町、という事もありましたが、やはり着物での旅行は楽しいです。

いつもと違う気分になれますし、お食事にどこへ入っても良い雰囲気で迎えてもらうことが出来ます。

普段の生活からちょっと離れる旅行はどこへいっても楽しいものですが、皆さんもお着物でその楽しさにもうひと味を付け加えて見ませんか?



  11月25日
祖父が亡くなり・・

 私事で申し分け有りませんが先週の20日に、私の祖父で玉川屋の会長の石井欣次が亡くなりました。

大蔵払い、京都出張、祖父の葬儀と続いていたため、店での営業やホームページの更新などお休みしておりましたので、

皆様にご迷惑をおかけして申し分け有りませんでした。

 私の祖父は、明治40年に末っ子の長男として生まれましたので、小さい頃から跡継ぎとして責任を持たされて育ってきたそうです。

十代の後半に父を亡くし、その直後に関東大震災を経験し渋谷の地へ店を移して商いを続けてきました。

戦争や数々の大変な時期を乗り越えながらも明治、大正、昭和、平成とそれぞれの時代にあった商売を心がけて100年以上の商いを続けてまいりました。

孫の私からしても、その性格は質素で謹厳実直なもので、葬儀のときも大変多くの方にお参りいただくことが出来ましたが、祖父のその性格によるものとおもいます。

 

 今私が思うのは、浮利を追わず、基本に忠実に仕事をして行くことの大切さです。

永く一つのことを続けてゆくことは、一つ一つの事がらをきちんと積み重ねて行くことの繰り返しだけであり、

小さなことでもおろそかにはしてはいけないという事です。

 私共でもお婆様、お母様、お嬢様と何代にも続いておつきあいを賜わっているお客様も多く有ります。

何の仕事でも同じでしょうが、特に一つのお品を何代も大事にすることの出来るお着物では、一層その一つ一つの積み重ねを大事にすることで、

お客様に安心してお着物をお召しいただき、お着物を楽しんでいただく事が出来ます。

 今まで続いてきたものを継承することの責任とよろこびを感じると共に、あらためて初心に戻り仕事に臨む気持ちを大事にしたいと思います。

手をかけて作られたお着物の価値と、お着物を装う楽しさとをしっかりと皆様にお伝えしてゆきたいと思っています。

 色々な道があることとは思いますが、ホームページをつうじて多くの方に思いを伝える事は大事なその道の一つですので、

これからもどうぞよろしくお願い致します。



11月3日
旅行には着物で!

 9月、10月と仕事で遠方へ出かけることが多くありました。

現地までの行き帰りは荷物も沢山有りましたのでスーツ姿で移動しましたが、目的地に着いてからはずっと着物で過ごしていました。

その時にあらためて感じることは、旅先について着物を開いても全然シワになっていませんが、

洋服のジャケットやズボンを持って、シワが付かないように現地で移動するのはなかなか大変なのです。

 カジュアルな格好だけならそれ程には気にならないのですが、スーツやブレザーを着ようとした時に、ちょっとシワが有るのは残念なところです。

(特に今回は仕事が中心でしたので、お客様にお会いする事も多く、特に気になりました。)

 お着物は立体裁断でなく、直線裁ちなので、たためばペたんと平たくなります。

あとは重ねても、丸めても(立て方向に丸めるように小さくたたむと、以外とシワにならない時もあります。)大丈夫です。

逆に、重ねてぎゅうぎゅう押す位のほうが、鞄の中でも動かずきれいに運べます。


 旅行の時に着物を着る時には、「玉川屋の提案のページ」 でもご紹介していますが、付け帯がとても便利です。

旅先のホテルなどのせまい部屋や、小さい鏡でもちゃんと着られますし、時間が足りない時でも安心して着ることができます。

また、旅先までの新幹線などの中では、お太鼓の部分をはずして胴巻きの所だけをしめて、上に羽織りを着て東京においでになる地方のお客様も有ります。

(着た姿は半幅帯をしめている様に見えますし、お太鼓が無いのでシートによっかかっても帯がつぶれたり、帯枕で背中が痛かったりといった事は有りません。)

 (女性に比べると、男性のお着物はもっと楽なので移動の最中でも安心して着られます。)


 また何日もお着物だけで通すなら、衿の汚れも気になる事と思います。

 その時は、衿用の簡単な染み抜きもありますし、2、3枚の半衿を重ねてかけることも出来ます。

あまり沢山重ねるとせっかくの衿元がボテボテしてしまいますが、汚れたら外から順にはずして行くというのは、忙しい旅行中にはけっこう役に立つはずです。

(普段のときにはあまりおすすめしませんが、何日も着る時に何枚も襦袢を持って行くのは大変というときにはこんなアイデアもあります。)


 今では宅配便でどこへでも荷物が送れますので、旅先へは手ぶらでお着物姿で行くことも出来るでしょう。

景色のよい所をお着物姿で散策するのも、よい思い出になることと思います。

 旅先でも、電車の中でも、いつもよりお店や旅館のサービスも丁寧になることは間違い無いですよ。


   皆さんの旅行の時のアイデアがありましたら、ぜひ教えて下さい。 このページでお伝えさせて頂きます。

 



10月24日
職人芸の体験講座

 東京の両国にある、「江戸東京博物館」で江戸小紋染めや組紐、江戸べっこう、つまみかんざしといった日本の伝統工芸を体験する講座が開かれます。

 出来上がった品を目にすることは多くても、その手技を自分で体験することはなかなか無いと思います。伝統の技に対する愛着と理解を深めるよいチャンスではないでしょうか。
 
 他にも、江戸象牙、江戸切子の全部で六つの講座です。

 問い合わせ先は、ふれあい体験講座事務局(電話 3501ー5313)です。

 



10月21日
湯島天神の菊祭り

 11月1日から23日まで、東京文京区の湯島天神で、恒例の「菊祭り」が行われます。

 今年で19回目を迎えますが、今年は大河ドラマの毛利元就をテーマにした菊人形を中心に、役2500点の菊が飾られます。

 菊はお着物の柄としても季節を問わず定番の柄で、しべに花ビラを沢山重ねた菊や、迫力有る乱菊の柄、丸くデザイン化したような饅頭菊などその表現の仕方も様々です。

 季節もよい時期ですので、気軽な小紋や紬でお出かけするのも楽しいことでしょう。

金閣寺のライトアップ

 創立600年を記念して、10月18日より11月3日までの間、今日との金閣寺でライトアップした夜の特別拝観が行われています。

 足利義満がかがり火で宴を開いた故事に習ってのライトアップだそうです。

 今回が初めての試みで、「次回の予定はない」とのことですので、ぜひ足を運んで見たいものです。

 (特別拝観は、午後6時半より9時まで)

 



9月20日
京都御所の一般公開

 来月10月8日(水)から12日(日)まで(公開時間は午前9から午後3時まで)、京都の御所が一般に公開されます。

 清涼殿などに文官姿や十二単姿の人形を飾り、宮中行事の「節会(節会)」の様子を再現してあるそうです。

普段は入れない御所の中を見る事の出来る機会です。

私も京都にいるときに入った事がありますが、今は街中となった御所ですが中は何となく厳かな雰囲気があり

京都らしい情緒にふれる事ができるのではないでしょうか。お着物姿で御所の散策なんていうのも素敵ですね。

 



9月10日
やっぱり下駄はいい?!  

  今年の夏は、下駄がブームになどと言われていました。

2、3年前から浴衣にサンダルを合わせて着る方も増えてきていましたが、今年はジーパンの足元にも下駄が流行のようでした。

下駄も、浴衣に履く様な木の素材のものから、ゴムの底に柔らかいパイル地の鼻緒を付けたものまで色々有りました。

底は以前の様に2本歯の下駄でなく船底と言われるぺったんこな底に、ゴムを張って滑りにくくした下駄が多かった様です。

 

 下駄だけでなく、畳おもてがちょっとかわっているのと、鼻緒の色も最近はたくさんあるので雪駄を買いにくる人もずいぶん多くいました。

私の店は、呉服が本業なので流行物のサンダル風の下駄は扱いませんでしたが、

それでも普段からおいている古典風の下駄は、浴衣のお客様意外にもずいぶんと売れました。

髪の毛を染めた若い人が買いに来た時は、年配の店の人はびっくりしていましたが、だんだんに普段あまり店に来ない方をお相手するのも楽しんでいたようでした。



  私も普段家にいるときは、ほとんど素足でいますし、つっかけ代わりに草履を履いていますが、

下駄や草履の鼻緒を素足に履くのはけっこう気持ちの良いものです。

 足の裏には沢山のツボがあるとも言いますが、普段は靴下やストッキングで覆ってしまっていることが多いのではないでしょうか。

素足でいると、そのツボにも自然と刺激があって良いようです。

(すあしで過ごす幼稚園があって、そこの子は病気をする子が少ない、という記事を読んだこともあります。)

 

 また、鼻緒の当たる親指と人指指のつけねを刺激するのは、足に緊張が伝わりバランス感覚を養うのにもいいようです。

靴のなかに鼻緒のついた、健康シューズやスポーツシューズも有るそうです。

ヒールがなく足首も安定しますので、外反母指の予防にもなると、私の祖母はお医者様に言われたそうです。

 なかなか普段は、素足で過ごす事も少ないかもしれませんが、あまり大事に覆い過ぎず自然にリラックスさせてあげるのもいいんじゃないですか?

 


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