トピックス、着物つれづれなるままに


お着物や和のものについてのトピックスや、思いつくままに色々書いています。
ご感想やご意見なもぜひお寄せください。
なるべく頻繁に更新するように頑張ります。
おいでになったら再読み込みして下さい。

平成14年の5〜8月の分です。


 

8月11日

つれづれ日記 「呉服屋とお客様のお付き合い」

暦は立秋とはいえ暑さも厳しき折ですが

皆様お変わりございませんでしょうか。

いつも有り難うございます。玉川屋の石井貴彦です。



8月11日(日)より18日(日)まで、お店もお休みを頂きます。

あけてからは、秋らしい雰囲気をお届けしたいと思っております、

楽しみにしていて下さいませ。



先日書きました、箪笥の整理のお話に

  >それにしても,呉服屋さんて,お客様のおうちにあがって,箪笥の整理のお手伝いをしたりするんですねえ!

  >びっくりです。

というコメントを頂きましたので、掲示板の「きもの お茶飲み話」にも書きましたが

お返事をかねて、そんなお話を・・




呉服屋はお店でお商いをすることもありますし、

お客様のおうちへ伺ってということもあります。



仕立てたり、お手入れなどのお品をお届けしたり、

何かご注文があるときにはそんなお品をお持ちすることもあります。

(お話ししながら、お茶飲みに・・ なんて事もたまには)



呉服屋は以前から、お客様と長いお付き合いをさせて頂くことの多いお仕事です。

お召しになるお着物についても、

お生まれになったときの初着、七五三のお祝い着、十三まいり、

成人式、お嫁入り、ご婚礼の礼服などなど人生の節目節目のお召し物はもちろん、

それ以外にもご普段のお召し物など

生まれてから亡くなられるまで(ご葬儀の白の着物もご用意させていただくこともあります)

色々な形でお付き合いをさせていただきます。



お着物のご用だけでなくとも、

呉服屋は色々な形で何でもお手伝いをさせていただきます。



お祝い事やご慶事、弔事、ご婚礼などのしきたり事のご相談から

お仕事や趣味のお話まで、お店のお客様にも色々な分野の方がおいですので

着物に限らずそのお家のお役に立つことに関われるのが呉服屋の仕事だったりします。

(結構、何でも屋だったりするのです、

 運ぶときに着物がシワにならないように、お引っ越しのお手伝いや

 箪笥やさんのご紹介なんて事もしたことがあります。)



もちろん私も、色々なおうちで色々なお話を伺うのは

何通りもの人生や生き方を自然と勉強させていただくことにもなりますので

それもまたこの仕事の楽しさだったりもします。

(祖父からも、呉服屋はお家の奥まで上げていただける

 数少ない商売の一つ・・ と、聞かされておりました。)



そんなお付き合いをさせて頂きますので

いざお着物のご用の時には、

どんな時に、どんなご用で、どんな雰囲気でお召しになるのか・・

といったことも十分分かりますので、

その時のお好みに合わせてお品をご用意します。



お店においで頂ければお揃えしております沢山のお品をご覧頂けますが

お持ちしてお目にかけるときには、数点のみお持ちしますので

自分の頭の中でお伺いするお客様のお着物姿をイメージしながら

コーディネートを考えてお目にかけます。



自分の中で色々な方の取り合わせを思い浮かべながら

着物や帯を選ぶのも、楽しいことですし

そんなお品を、どんぴしゃりでお気に召していただければ

それがこのお仕事の一番の嬉しさとなります。

 (「あの着物を着たら、やっぱりよかったわよ」、

   なんて言葉を頂けたらさらに嬉しいものです。)



お店においで頂いたり、お家へ伺ったり・・

どちらにしても長いご縁をお客様から頂けるのは

着物が単なる「品物」としてだけではなく

一つ一つに思いのこもるお品であるからこそとも思います。



お着物のことに限らず、全然畑違いのことでも

何かご相談事があったら呉服屋さんに相談してみるのも良いかもしれませんよ。

きっと、良い智恵を何か持っているかもしれません。

 (うちの場合は、祖母と両親と私と三世代で智恵を出し合うと

  大概のことは何か良いお返事が出来たりします。

     時折、世代間の差でもめることもございますが・・)



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残暑にフウフウ言いながらも、気が付くと

時折吹く風に涼しさが大分感じられるようになってまいります。

お休みが明けましたら、一足早い秋の雰囲気を

また楽しみにしていて下さいませ。



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8月6日

たんすの整理


暑さも厳しき折、皆様お変わりございませんでしょうか。

いつも有り難うございます。玉川屋呉服店の石井貴彦です。



五月の連休からお店に並んでおりました「薄もの」も

お盆休みが明けますと、一足早い秋の雰囲気のお品へと

移り変わってまいります。



お休みの前にそんな準備をしていると、

外はヒートアイランドなんて名前で呼ばれる

最近の都市部独特の むっとする暑さなのですが

気分は秋風の吹く少し涼しい季節を

思い浮かべることが出来るようになってきます。




この夏のお仕事の中で、たんすの整理のお手伝いをずいぶん致しました。

「今まで着ていなかったのだけれど、この秋からは着物を着ようと思って、、」

「浴衣を毎年着ているうちに、今年は夏の着物を着てみたらとっても楽しくて、

   涼しくなってからも着物を着てみたい、、」

「今まではお母さんの着物と帯を着ていたけれど、これからは自分のコーディネートをしてみたい」



色々なご要望でお家にあるお着物、

大部分はお母様やお婆さまのお着物や帯を

(もちろん男性のお着物は、お父様やお爺さまの)

整理するのをお手伝いしてきました。



色や柄 派手・地味 寸法 汚れ具合などなど

もちろん着られるお品もあれば、ちょっと無理というお品もあります。



古いお着物は(特にお身内のお品は) 、

「あの時お母さんが着ていたのを覚えている」とか

「父母会の時には、この着物を着てきてと言ったのよね」なんて

結構思い出が残っていたりするものです。



アルバム整理を始めると眺めているうちに一行に進まないのと一緒で、

着物を一枚出してはお話しして、帯を一本出してはまたお話しして

なんてしているとすぐに時間がたってしまいます。

聞く方も、自分の祖母の時にお売りしたお品の話なんかを伺うのも

結構楽しかったりしますので、全然進まないのですが

こんな楽しみも永く大事に出来る着物ならではかなとも思ったりします。



(そんなこんなで、この夏に3度もお伺いしたお家もありました。)



それぞれに思いがあるお品ばかりだから、

「そのうち着るかもしれないし・・」、「とりあえずしまっておいて・・」

なんて事についついなってしまい、何時間かしていざ落ち着いてみてみると

種類分けの整理は出来たものの、なんかすっきり整理できてはいない

ということも、また有りがちです。



お店でお客様とお話しているときにも、以前からお持ちのお着物の整理について

お問い合わせいただくことが良くあります。

そんな時にお話しするのは、まず

「いま着たい着物とそうでないお品を分けること」です。



思いがあり「いつかは着たい」そんなお品であることは分かっているのですが、

あえてそこで「今着ること」を基準に分ける。

別にしたお品であっても、処分したりするのではなく

とりあえず普段使う箪笥からは別にしてしまう。



もちろん収納するスペースも必要にもなりますので

紙やプラスチックの箱に入れて箪笥の上に積んでおいたりします。

(着ないで長くしまっておく場合でも湿気取りを入れて、定期的に見てあげれば十分大丈夫です)



その上で「いま着たい着物」に、お母さんの帯を合わせるか

今のご自分の雰囲気で帯を合わせるかを考えてまいります。

(帯は着物に合わせて使い回しが利く事が多いので、着物を基準に考えることが自然と多くなります。)



すると、つねに目に触れる着物の数が有る程度限られることで

ご自分の中に自然と着物姿のイメージが湧きやすくなってきます。

お出かけの前や、お店でお品物をご覧になっているときなど

この帯はあの着物に合わせて・・・ といった、

自分なりのコーディネートがずっとしやすくなるはずです。



もちろん、私にとってもお品を 整理することで

「こんな所に着て行くんだけど、どれを着たらよいかしら」なんて

お問い合わせを頂いてもすぐお返事がしやすくなってまいります。



着物を着て楽しんでいると、お身内のお着物だけでなく

色々な方から自然と着物が集まってきたりもします。

(娘にあげても大事にしないから、あなたにあげるわ・・

 なんて事もありませんか?)



着慣れてきて自分なりのコーディネートがはっきりしてくると

着物の数だけしっかり楽しめるようになるのでしょうが、

最初の頃は、多すぎてもかえって分からなくなってしまう事がありますよね。

十人いれば十人なりの、着物の大切に仕方があるのでしょうが

もしタンスの整理で困っている方がおいででしたら、

一つの道として「いま着たいお品」を基準にしてみて下さい。




お着物に関する知恵って、その人なりに色々なものがあるはずです。

整理することに限らず、お着物についての「私のコツ」、

ホームページの掲示板「きもの お茶飲み話」へもぜひお聞かせ下さい。

  「きもの お茶飲み話」へはこちらをクリックして下さい。



自分にとってはいつものことでも、

となりの人には目から鱗、そんなこともあるかもしれません。

いまのうちに色々な楽しみ方の知恵を身につけて

涼しくなってからの秋のお着物是非楽しんで下さい。



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7月14日

産地や染め屋さんへ・・


ニッパチなんて言葉をご存じですか?

寒さの厳しい時期と暑さの厳しい時期の2月と8月が

お店やさんは一年の中で一番手の空く時期・・といった意味なのですが、

呉服屋では7月頃から8月のお盆までが一年の中では少し落ち着ける時期となります。



夏の着物の承りも仕立に出し一段落し、

花火大会を前に浴衣のお客様が多くなる時期です。

(でも以前は、浴衣のお客様が一番多いのは五月の末頃でした。

 浴衣ブームや、花火大会が今のように沢山企画される以前の

 日常生活の夕方のお召し物として浴衣が着られていた頃のお話ですが・・)



そんなことで、今月に入ってからは

秋のシーズンに向けて自分の中のイメージを作ったり、新しい知識を付けたり

また、新しい品をお店に揃えるためにと

沖縄の読谷山花織、越後谷塩沢の紬の産地、本場結城紬、東京の更紗や小紋の染め屋さん・・と

色々な産地へ出かけたり、話を伺ったりしてまいりました。



自分の好みの品を作ったり、仕入をしたりといったことも勿論なのですが

一番の大きな目的は、作り手の方と直接お話しすることです。



単なる商品知識ということではなく、

どんなことを想いながら物創りをしているか、とか

今まで続けてきた技法や感覚をこれからどんな活かし方があるのか、といった話をしたり、

逆に、「こんな品は創れませんか?」 とのこちらからの要望にも

すぐに答えが返ってきて、思っていたようには創れずとも「こんな風になら出来ますよ」と

提案をもらえたりもします。



私たち呉服屋は、直接自分の手で物創りをする訳ではありませんので

お召しになる方と、作り手の人とを結ぶ情報のパイプの役となります。



作り手の人たちは、自分たちなりの感覚やセンスと、技法をもって

お品を作ってゆきますが、実際にそれをご覧になったお客様たちが

どんな風に思われるかは、なかなか直接に分からないものです。



例えば、作る側はどうせ着物を作るなら

柄が沢山であったり、色数が多かったりと手をかけた品の方が

きっとお客様は喜ぶだろうと考えたりします。

でも実際は、着物だけで装うわけではなく帯や小物を取り合わせて着物姿となりますので

その時には、柄や色が多すぎるより逆に少し控えめである方が

取り合わせの幅が広がりお洒落をすることがしやすくなります。

(柄を少なくしたり、色数を省くのは

 作り手の人からすると結構不安な事だったりするようなのです)



「自分がよいと思う絵からまず柄を減らせ、

 そして柄を減らすとバランスが変わるから、

 それに合わせて構図を変える、

 よく見ているうちにちょっと柄を足してみたくなるが

 我慢してその手を止める!」

そんな話を、以前に自分の親爺から聞いていたけれど

やっぱりそうなんですよね・・・ なんて話される産地の方もいらっしゃいました。



そんな話をしながら、どんな風にお洒落をしてお出かけしたがっているのか、

どんなお品があれば「着てみたい!」と思って下さるのか、

なんて話をして行くのは、お互いとても参考になることであり

そこからきっと喜ばれる良い品が出来てゆくこととの想いがありますので

作り手の方も、色々とややこしいこちらの注文にも一生懸命応じてくれます。



何でもかんでも色々に沢山に・・というわけにはまいりませんが

一点ずつ自分なりに想いを持って、こだわりをもって

お店に品を揃えてまいりたいと思っております。



梅雨が明け、からっと暑い夏には涼しげな薄ものが楽しい季節です。

そんなこれから時期に、秋に向けてのお洒落が楽しいお品を徐々に揃えてまいります。



季節の移り変わりと共に楽しめるお洒落・・・

是非御一緒に楽しみましょう!



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6月26日

想いのある、お振り袖


今年のお天気はいったいどうなっているの?

と、誰にともなく尋ねたくなるような春の季節でしたが

今の時期は、いかにも梅雨・・といった、しとしと雨の日が続いています。

お店に並ぶ夏の薄ものも、

陽射しの強い初夏の陽射しには、いかにも涼しげに、

でも、ひんやりと肌寒い今日のような(東京は朝からそんな天気なんです)陽気の日には

まだちょっと薄寒く映って見えます。



そんな日毎に違う陽気に合わせて、

お召しになるのが今の季節の着物の楽しみでもありすので

やっぱり、季節はその時期らしく流れてもらいたいものです。



先日、来年の成人式に向けて振袖をお作りいただきました。

前橋から東京においでになって、ちょうど玉川屋のウインドウにかけてあった

紫の縮緬地に手鞠の柄の手描き友禅の振袖をご覧頂きまして

お店にお寄りいただいたお客様でした。



色々なお話をしながら、何枚か振袖をお当てして、

帯や小物を取り合わせながらお目にかけると

最初はご自分の振袖姿のイメージがなかなか湧かなくても

だんだんに、ご自分の中にこんな雰囲気出来てみたいという想いが出来てまいりまして

「仕立上がるのが楽しみ・・」と、気に入っていただけるお品が見つかりました。



黒地の大シボの縮緬に、宝尽くしを描いた振袖をお選びになって

「小物はどんな色合いがよいかな」「履物はぽっくりが良いな」と

お召しになる日に向けて、どんどん楽しみが広がってまいります。

おいで頂いたのはお嬢さんとお母様でしたが、亡くなられたお婆ちゃまがお着物お好きで、

お孫さんのお振り袖を楽しみにしておいでだった、とのお話をお伺いし

「このお振袖姿ならきっとお喜び下さったはずですよ!」 なんてお話をしながら

お承りをいたしました。



帯を取り合わせ、深い黒の地の襟元に緋色の伊達襟を合わせて、

お仕立が出来てまいりました。

お住いは前橋ですが、今は都内のお婆さまの住んでいた家にお住いで

お届けはそちらにと伺っておりましたので

ご連絡をお入れしようと思い住所録をめくっていたところ、

同じ住所で、同じご名字のカードが2枚ありました。



そのお名前を見て思い出したのは、5,6年ほど前に

「まだ何年も先なんだけど、孫の振袖を今から見ておこうかと思って・・」と言って

お店にお寄り下さったお客様でした。

何枚かお目にかけながらお話をして、「お祝いが近くなったらまた伺うわ・・」と

それからも時々お振り袖のお話をさせて頂いておりました。



お振り袖をお渡しするときに、そのお話をしたところ

「そう言えば何年か前に "今日は振袖を見に呉服屋さんに寄ってみたのよ" なんて

 言っていた事があったわ」と伺いました。



偶然にも、お婆さまが以前にお寄りいただいたお店で

これもまた偶然にお立ち寄りいただき、お嬢さんの成人のお祝い着をお作りいただきました。

大変お気に召して選んで頂いたお振り袖なのはもちろん、

そのお嬢さんにとっては、「きっとお婆さまも、喜んでくれるはず」と

とっても思いのある一枚のお着物なることと思います。



呉服屋をしていると、そんな一枚の着物に対する深い思いを感じることが多々あります。

ご年輩のお客様のお家へ伺い、お孫さんに直すお着物のお話をしていると

「これは私が娘の時分に、母と選んでね・・」なんて、数十年前のお話を

伺ったりすることもあります。



今、新しいお着物をお作りになる方も

きっとそんな想いを持ちながら、ご自分に会うお品を選ばれる事でしょうし

その一枚のお着物にも、お召しになりながら色々な想いが蓄積されて行くことと思います。

だからお召しにならなくなっても、お着物は簡単に手放したり処分したりできず

大切にしていることも、一つの楽しみとなってまいります。



そんな想いのあるお品を、ご用意することが出来れば

呉服屋にとっては一番の嬉しい良いお仕事です。

そんなご縁から、(それこそ、お婆さまからお母様、お孫さんへと)

永くに渡って良いご縁を頂けることが呉服屋の仕事の楽しみでもあります。



そんなご縁を沢山頂けますよう、

気持ちよく楽しんでお召しになれるお品をお揃えしてまいりたいと思います。

お出かけにはちょっとつらい梅雨の時期ですが、

涼しげな薄ものが楽しい夏をまって、お着物沢山に楽しんで下さいませ。



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5月14日

夏への想い


夏を思わせる暑い連休が明けると、今度は肌寒い陽気が続いていますが

お変わりございませんでしょうか。



半月早い桜にはじまり、暖かな春に藤やツツジなど季節の花もずいぶん早く盛りを迎えた今年は、

いつもの年なら「今が見頃!」なんて時にはもう遅すぎて・・

ということも全国的に少なくなかったようです。



着物も季節感を自然と出すことが楽しみ方の一つであるので、

「春は春らしく、夏は夏らしく」でないと私共の仕事も、どうも雰囲気が出なかったりします。

せっかく出来てきた藤の染帯、お店にかけようと思ったら「ちょっと今からじゃ・・」なんて事で、

一度もお店に出さずにそっとしまってしまったお品もありました。

(素敵な帯でしたので、来年をお楽しみにしていて下さい)



連休が明けると、お店の中のお品も「薄もの」にかわってまいります。

毎年の事ながら、少し早めに涼しげなお品が並ぶと気分も夏らしく変わってくるから不思議なもので、

季節感は実際の周囲の陽気に合わせることもさることながら、

自分の気持ちに合わせて自分で演出するもの、と改めて思います。



そんな、夏のお召し物は、「薄もの」や「蝉の羽衣」なんて

風情のある呼び名もあります。



雰囲気のある情景をさす言葉に、 「風流」や「風情」なんて言葉がありますが

辞書を引いてみてもはっきりとしない、あまりピンとこない説明が

書いてあったりします。

それだけ、はっきりと表しにくい趣(おもむき)があり

日本人にとっては気持や情緒の部分で感じる言葉であるようです。

 (英語の辞書を引くと、tasteという単語をあてたりしていますが
  私たちが感じる、風流や風情の語感からはだいぶちがいます)



「風」という字が使われているのを見ると、はっきりしたイメージをさすのではなく

風のながれるように 自然とそこに漂い、ともすれば一瞬のうちに移り変わってゆく・・ 

そんな、心で感じる気配や様子といったものを「風」にたとえて表したのかなと思うと、

日本人であればこそ感じることの出来る言葉ではないかとおもいます。



着物の中でも、とくに夏の着物は、そんな言葉がぴったり当てはまります。

他の季節と違う、夏の着物ならではの楽しみ方にもつながってきます。

夏の着物ならの楽しみというと・・・



「季節感」

桜や藤などの柄は、とっても素敵だけれどその時期だけだからもったいない。

なんて思ったこともおありでしょう。

夏や単衣のお品は、逆にすべてが時期の限定のお品です。

その時期の色や柄をその季節に着る 、 

そんな季節感あふれるお洒落をめいっぱい楽しめるのも 日本の着物ならではの楽しみです。



「素材感」

絹、麻、綿・・・ 夏のお着物はその素材の豊富さと、

それぞれの織り具合による着心地も魅力の一つです。



絹にも絽、紗(その中にも3本絽、5本絽、立絽、紋紗、などなど沢山あります)

また織物も、冬物と同じように色々な産地の織物が揃っています。

麻や綿にも、ちぢみや海島綿など工夫を凝らした着やすい素材もありますし、

他にも、絹紅梅や綿紅梅、しぼを出して織った単衣用の揚柳の生地など

冬の物以上に、色々な素材があり、それだけでも話が尽きないほどです。



帯や襦袢にも同様に様々なお品がありますので 、その組み合わせ方を楽しんだりと

素材感をテーマにした着こなし方は、夏のお着物だからこそといえます。



「目にも涼しい、襲(かさね)のうつり」

薄ものの生地に、下の生地がうつる 襲(かさね)の妙。

それぞれの素材や織り方によって、そのうつり具合も様々です。



洋装では夏は薄色のお召し物が多くなりますが、

着物の場合は、逆に濃い色目の着物の方が 襲のうつり具合や、

帯の取り合わせによる目にうつる涼しさがよりはっきりと出てきます。



洋服のシースルーと違い、透けることがお洒落じゃなくて

うつることがお洒落なところが、 日本の着物ならではなのです。




 浴衣や紅梅の気軽なお召し物から、夏らしい柄の涼しげな染め物、

 シャリ感のある織り物・・・

  ご自分なりの、「夏」を是非楽しんでみて下さい。



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