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玉川屋 トークショー「麻」

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平成12年5月20日(土)に玉川屋ホールでの

越後の麻の機屋さんによる、夏を代表する素材の「麻」についてのトークショーです。

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今日は越後上布のお話をするつもりですが

その前に、まず麻全般についてのお話からしてまいります。

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皆さんがよく洋服で着られる麻はラミーというものです。

例えば小千谷縮み、洋服にする麻もほとんどがこれです。

麻にはリネンと呼ばれるのもありますが、別名は亜麻とも言います。

一口に言うと、ラミーの方がごわごわしている、リネンの方が柔らかいです。

で、作られている地域はリネンの方が寒い地方、北ヨーロッパ、ソビエト、エジプト、北フランス

でラミーの方が暖かい地方、ブラジル、中国、日本、フィリピン で作られます。

寒い方がリネンで、暖かい方がラミーと大体覚えて下さい。

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狭い意味では麻はその二通りになりますが

大きい意味で言うと、植物からとった繊維のことを麻と言います。

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大麻や、昔パナマ帽などに使ったマニラ麻、

パイナップルから採ったパイナップル麻、これは以前マルコス大統領などがこれを着ていて

フィリピンでは夏の正装になります。

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非常に薄い良質の麻、ラミーとか苧麻か呼ばれますが

ラミーとか苧麻というのは全部読み方が違うだけで

日本語では苧麻、植物学上ではまお、地方によってはからむし、と呼ばれ

ラミーというのはフランス語になります。

  (東南アジアのマレー語でも、フランスの占領下でしたので同じくラミーと呼ばれます。)

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同じ苧麻でもそれぞれに微妙に違い

会津や沖縄で作るものではちょっと違う亜種が沢山あるんですが、

麻が何で最終的に布になったかというと、繊維が取り出しやすい、という特徴があります。

普通、植物は、細胞が菱形になっていて斜めにつながっていて、縦に裂こうとしてもうまく行かない、

麻のように布にしやすい植物は、細胞が長方形の形をして縦につながっていて裂きやすい、

で糸にしやすいので古来よりもっとも早くから使われてきました。

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麻の主成分は植物繊維のセルロースで、絹は動物性のタンパク質が主成分になります。

どう違うかというとタンパク質の方は炭素が入っていて年数が経つと酸化してもろくなってくる

セルロースというのは年数が経つと、酸化して蝋化(ろうか)して逆に強くなる、

奈良の大仏殿など700年ほど経っていますが強度はまだ上がっています、あれも材料は木です、

時間が経って行くと植物の繊維の強度が上がっているということなんです。

それと、植物繊維の特徴として水に強い、マニラ麻などが昔は船のロープとして使われていたのは

その強さから来ていました。

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麻全般の話はざっとこれぐらいにして、わたくしの専門の越後上布の話をさせていただきます。

川端康成の小説「雪国」にでてくる、「トンネルを抜けるとそこは雪国だった・・」、

湯沢、そのとなりの石打、塩沢、さらにその隣の六日町、この辺で織られているのが越後上布です。

夏の麻の織物として、国の重要無形文化財に指定されています。

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重要無形文化財というのは、ある品物や技法を、一人で作れるとか、一人で演奏できるとそういった方が

重要無形文化財技術保持者、一般にいう人間国宝です。

一人で最初から最後まで出来るものというのは個人で指定を受ける、

ところが一人では出来ないというものは、総合指定としてその技術全体が指定されます。

例えば芸能の部などでは雅楽、一人で一つの雅楽器を演奏するのではなく

沢山で全体で演奏することに対して、総合指定を受けています。

工芸の部、ものを創る世界でも指定されているものはありますが

織物に関しては現在五つしかありません。

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結城紬、久留米絣、喜如嘉の芭蕉布、宮古上布、そして越後上布、

越後上布は正式には、越後上布・小千谷縮布と二つ並べて指定されています。

五つしかない中で、最初に指定を受けているのが越後上布です。

そして翌年、結城と久留米絣が指定を受けて、

それからしばらくしてから、芭蕉布と宮古上布が指定を受けております。

ですから、織物としての日本の古来の文化的な要素を一番そのままの形で残しているのが

越後上布とも言われております。

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もう一つ、重要無形文化財というのはその技術がどこかで切れているものは

指定を受けることが出来ないのです。

ずっとそのままの形で続いており、文化としてさかのぼれて実証できなければならないんです。

久保田一竹先生で有名な辻が花染めというものがありますが、

あれは一度完全に絶えて無くなってしまった技法であり、それを古来の品物を見ながら

推測して、試行錯誤の末にこの染め方であっただろうというところへ至っているわけで

以前にもこの染め方で染めていたということが実証できませんのでどんなすばらしい物ではあっても

重要無形文化財としては指定が受けれないのです。

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根元的にその始まりであった物を、ずっと永続して受け継いできている物でなければならないんです。

個人指定のものは、その方が亡くなってもその技術を受け継いだ方が指定されることはありますが

総合指定のもの、技術全体をそのままの形で保持していなければならないものに関しては

維持して行くことが大変難しい事でもあります。

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で、ちょっと話はそれますが、

先に挙げた五つの中で、その意味では例外が一つだけあります。

それが喜如嘉の芭蕉布です。

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