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着付け教室の生徒さんを中心に、総勢で25名ほどで八王子にあります、江戸小紋の工房に見学にまいりました。
あらかじめ板に生地を張って途中まで染め付けをしてもらっておりましたので、
まずはその生地と共に沢山ある型紙のサンプルなどを拝見しました。
板に水気を与えてから、糊で生地を貼って、
動かないようにテープで生地の端を留めてゆきます。
何度も使っているうちに、糊が自然と板にしみついてゆきますので
板に霧吹きで水気をかけてやるだけで、ぺたぺたとした糊気が戻ってきます。
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今日は参加者が多かったので、通常の染めのお仕事はお休みして、
見学会モードで準備して頂いた為、窓や戸も開けていただいてありましたが、
本来は閉めきってお仕事をするそうです。
江戸小紋は、型紙を使い米糠から作った糊を生地に置いてゆくのですが
その糊が地色からの防染の役目を果たし、地色の中に白い点々を残して柄になります。
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糊が途中で乾いてしまうと、防染の役目を果たさなくなり
地色がかぶってきて綺麗に染められないため
常にある程度の湿度を保たなければなりません。
とても暑い日でしたが、
それでも工房の中には加湿器があり工場の中はかなり蒸し蒸しした状態でした。
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「冬場や、窓を開けて風を通すと、乾燥しやすいのは分かるのですが、
なぜ湿気っぽい夏にも加湿器を使うんですか?」 との、おひとりのご質問に、
「外の湿度が高くても、夏もこれだけ気温が上がると糊もどんどん乾いてしまうんです・・」とのお答え。
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自然のままに染めることの大変さを、まず出だしから、
皆さん感じていたようです。
「じゃあ、型紙を使って糊をおくところを見てもらいましょうか」
水で湿らせてなじませた型紙を、前の染め付けた柄とうまく合わせながらピンで留め、
糊をおいてゆきます。
糊を型紙の端にとり、木のヘラでそれを上下に動かして型紙全体に糊をおいてゆきます。
見ていると本当に手際よく、気持ちが良いほどにさっさっとすすんでゆきます。
糊を置きおわって、型紙をさっと持ち上げると、柄の継ぎ目が全く分からないほどに綺麗に糊が置かれており
「すごーい!」なんて、皆さんびっくりされておりました。
一反の生地が約12メートル、型紙により巾が異なりますため柄を継ぐ回数も違ってまいりますが
50回から多いもので100回近く柄を継いで一反の江戸小紋に柄付けが出来るのです。
(それからまだ、蒸しや、色合わせ、しごき、補正・・と言った工程が続きます。)
「あなたも、ちょっとやってごらん・・」なんて言っていただいて
おひとりの方が、実際に生地に染めてみました。
袱紗の染め付け体験はする予定だったのですが、いきなり本物の生地に染めさせてもらうことになって
さっき見ていた職人さんのようには、手が動かず、苦心しながらの糊置きでしたが
貴重な経験となり、今回の見学の良い思い出となったことと思います。
糊を置きおわった型紙は、糊が着いたまま残らないように水で洗います。
柿渋で耐水性を高めているとはいえ、元は和紙の型紙を水で洗ったりするのですから
しぜんと型紙も傷んできます。
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染める技術もさることながら、型紙を彫る技術も現在貴重なものとなってきています。