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玉川屋 トークショー「織りもの」のお話

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平成13年5月19日(土)に玉川屋での

越後の麻の機屋さんによる、「織りもの」についてのトークショーです。

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こうして文章に書いてしまうと、講義のテキストのように見えるかもしれませんが

実際は、あちらこちらと横道にそれながら(結構その横道のお話が面白かったりするのですが・・)

着物にまつわる色々なお話を聞いていただけました。 

     また時折、こういった企画をしてまいりますので、是非お足をお運びになって下さい。


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昨年は、ちょうど同じ頃こちらで麻のお話をさせていただきましたが

今年は織物について、紬とお召しについてまずお話をさせていただこうと思います。

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皆さん紬のお着物はお分かりになることと思いますが、

ここにいくつか夏物、冬物いろいろなお品がありますが

結城紬をはじめこういったふわっとした感じがする、これが紬ですね。

 色々な産地・風合いの紬です。

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紬の中では、よく結城が最高峰といわれますが

この紬という生地がどうやって作られるのかというと

まず糸作りのところからお話をさせていただこうと思います。

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天然の繊維の糸の作り方は3種類有ります。

一つは、昨年もお話いたしましたが麻のような木の繊維から取った糸。

木の繊維ですので細くさけますので、これを細く細く均一に裂いて

つないで作ります。

こうして糸を作ることを「績む(うむ)」といいます。

 麻の糸の元です。

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紡績会社の紡績という言葉がありますが、この「績」という字を使って

「績む(うむ)」と呼びます。

有る程度の長さのものを、つないで糸にすることを績むといいます。

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それから、繊維を綿状にして、そこから引っぱり出しながら糸を作ること、

これが「つむぐ」です。

 繭を真綿にして、糸を紡いでゆきます。

絹ならば真綿から引き出す、綿やウールなどでも同様に綿状にして

そこから糸を引き出しながら作ってゆきます。

綿にしたものから糸を引き出す作業がつむぐです。

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つづいて三つ目の作り方。

これが蚕の繭です。

蚕が自分で糸をはいて繭を作るわけですが

はき初めから、終わりまで休まず糸をはき続けてこの繭をつくりますので

理屈の上では、この繭は一本の糸が絡んで出来ていることになります。

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この繭は普通の養蚕で使われる家蚕(かさん)という繭ですが

これで約1200メートルの糸が絡んで一つの繭を作っています。

一本の糸は蚕の唾液の成分で絡んで作られますので

お湯で煮てそれを柔らかくしてやり、どこか一カ所ひきだしてやると

ずっと出てくるわけです。

鍋で繭を煮ながら糸を引きだしてゆく、これが「ああ野麦峠」などで見られる

糸作りの場面です。これを「座繰る(ざぐる)」と言います。

 お湯の中の繭から糸を引きだします。

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こうして座繰って取った、こういった平らでまっすぐな糸を何本か合わせて作ったのが

「生糸(きいと)」です。

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いま三つ、

繋いで作る「績む」、真綿から引き出して作る「紡ぐ」、

繭から一本の糸を取り出して作る「座繰る」、糸の作り方を説明しました。

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座繰って取った糸を生糸、紡いで取った糸を紡ぎ糸と呼びます。

紬糸は節のある、でこぼこして毛糸みたいな感じになります。

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綿状のところから糸を引き出しますので、当然毛糸のように太い細いがでてきます。

この紬糸を使って織った品物が「紬」です。

紬の着物にも、経糸(たていと)も緯糸(よこいと)もこの紬糸を使ったもの、

緯糸には生糸を使い、経糸にはこの節のある紬糸を使ったもの、またその逆の品物もあります。

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そういった意味では、紬とは名前についておりますが

大島紬は紬糸ではなく生糸を使って織られています。

ですので真綿紬のように節のある地風ではなく、平たい地風の織り上がりになっています。

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大正の中頃までは紬糸を使って織られていたようですが

生糸を使って織る技術が出てきて次第に生糸で織るお品がほとんどとなってきました。

生糸を使った先染めの平織りという事では、大島紬や今は少なくなった銘仙などがあります。

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真綿から紡いで取った節のある糸で織った織物が「紬」とお話しして、

次は、「お召し」のお話をしようと思います。

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