一珍染め & 今年の「猫!展 プラス」
'2009-09-24 22:59:04')
こんばんは、玉川屋呉服店の石井貴彦です。
きょうは陽差しも良く、
歩くと汗ばむくらいのお天気でありましたが
日なたから一歩、街路樹の木蔭にはいると、
ずいぶんと乾いた空気と涼しさを感じます。
目で見て感じるよりひととき早く、
季節の移り変わりは、
肌で感じられてまいります。
昨日のこのページで、
「角出し」の帯結びの講習会のお話をかきましたが
その時の、先生で来てもらいましたのは
女性の染めの作家さんでありました。
一昨年の秋に玉川屋でひらいた「猫!展」
の、帯を染めてもらった、本田早苗さんという作家さんです。
本田さんの染めは、「一珍 (いっちん) 染め」という
友禅に通常使われる餅米の糊ではなく、
小麦粉からつくられる一珍糊を防染に使用して染める友禅の技法です。
一珍糊は乾くと細かなひぴが入り、
そこに染料が侵入することで自然と独特の表情が生まれてまいります。
上の写真は、今年の猫の染帯のお太鼓の部分ですが
ひび割れた所に、地色や友禅の染めの色が
しぜんと入り、とても柔らかい雰囲気に染め上がっているのが
お分かり頂けることと思います。
お太鼓に形作るとこんな雰囲気になります。
お背中の柄も楽しいながら、
お太鼓に結んだ時の、太鼓の裏にもワンポイントの
お遊びが染めてあります。
お太鼓の裏は、ご自分では見えませんが
周りの人からはけっこうよく見えるものです。
表の柄に合わせてワンポイントのアクセントをあしらってみたり
表をシンプルにして、太鼓裏に柄を持ってきてみたり
「猫」に「鈴」・・・なんて組み合わせや
ご自分のお好きなモチーフで、お好きなように誂えてお染めすることもOKです。
友禅だけではなく、刺繍で入れてみたりも、
なかなかに遊び心いっぱいのお洒落です!
(上の、足跡のお太鼓柄の帯は、太鼓裏の猫に刺繍が入っているのです)
11月には、今年も本田早苗さんの「猫!展 プラス」を
玉川屋で開きます予定です。
今年の猫ちゃん達も、だんだんに増えてまいりました。
日本の着物、帯としてのテイストたっぷりながら
とても柔らかい雰囲気で女性ならではの感性と遊び心いっぱいの
「猫」のモチーフ・・・ 楽しいお品をぜひご覧になって下さいませ。
なぜ "猫" なの? と聞かれることも多かったですが、
猫が大好きな本田さん、
作り手さんが、
自分の好きなテーマで、好きなように染めてみると
どんなに楽しいお品が出来てくるのか、
秋の深まる季節の頃のお楽しみです。
精緻な染め上がりの糸目友禅とはまたちがう、
独特の柔らかな雰囲気の染め上がりが持ち味の一珍染めですので
猫だけではなく、
花屋さんやケーキ屋さんなんていう、ちょっと着物らしくないテーマでも
染めてもらうことにしています。
シックな着物に楽しい帯・・ 明るい色目の着物に可愛らしい帯・・
着物ならではの遊び心のあるコーディネートをご覧になってみて下さい!
勿論、落ち着いた品の良い染め上がりも、
一珍染めの、またもう一つのテイストです。
単に、染めの技法と言うだけでなく
着物や帯として染め上がりのイメージの広がりや
取り合わせることによって、雰囲気や表情が膨らんでゆく
そんな着物ならではの趣きを、
これからの季節のお出かけに楽しんで頂ければ嬉しいです。
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